世界一の長寿国である日本は、平成19(2007)年に生まれた子ども達の半数が、107歳より長く生きると推計されており、まさに「人生100年時代」が現実味を帯びてきました。
昨年の日本人の平均寿命は84.7歳(女性87.74歳、男性81.64歳)となり、ともに過去最高を更新し、前年に比べ女性は0.30歳、男性は0.22歳伸び、それぞれ9年連続のプラスとなりました。
長寿は大変素晴らしいことであり、これは日本の医療水準の高さ、国民皆保険制度のため医療費が比較的安く、病院にかかりやすいこと、また伝統的に成人病にかかりにくい食文化を持つこと等のお陰によるものでしょう。
その一方で、社会的孤立者の問題も深刻になっています。社会的孤立とは、一般的に家族や社会との関係が希薄で他者との接触がほとんどない状態のことを指します。現在の日本では、4人に1人が「単独世帯」だといいます。さらに、65歳以上の一人暮らしの高齢者は昭和55(1980)年には男性約19万人、女性約69万人でしたが、平成22(2010)年には男性約139万人、女性約341万人にまで増加しています。また、近年の日本の生涯未婚率は、女性は7人に1人、男性は4人に1人と上昇しています。
OECDが「社会的孤立者の割合」の調査をしたところ、「友人、同僚、その他の人」との交流が「全くない」あるいは「ほとんどない」との回答が、日本は15.3%にのぼり、OECD加盟20カ国の中で最も高い割合となりました。特に男性は定年退職後、「会社と肩書」を失くし、周囲との交流もほとんど失くしてしまいがちです。それは「会社と仕事」に全力集中だった証ですが、核家族化、少子化が進んだ中、家族以外は話す相手がいない「孤独」の状態で、長い人生を過ごすのは「幸福」とはいえないのではないでしょうか。
安倍政権下では内閣に「人生100年時代構想」推進室が設置され、「意欲ある高齢者に働く場を準備する」という観点から「65歳以上の継続雇用年齢の引き上げに向けた環境整備 」「高齢者の雇用促進」「公務員の定年の引き上げ」等の方向性が示されました。しかしながら先月12日、岸田政権は肥大化した組織をスリム化し、また「基本的な方針の策定から期間が経過し、業務に一定の区切りがついた」とのことにより、「人生100年時代構想」推進室を廃止すると発表しました。「意欲ある高齢者に働く場を準備する」ための「基本的な方針の策定」は当然ながら必要なことです。しかしながら定年退職後の人生も長く、その生き方についても、もっと議論すべきだったのではないでしょうか。
先週お配りした「県政改革 寛容な共生社会の実現に向けて」に書かせて頂きましたが、「幸福度ランキング」世界一のフィンランドの「人生の自由度」や「他者への寛容さ」等を参考に、社会の仕組みや日本人の生き方そのものをもっと議論すべきであり、また人々が少しでも多く「幸福」を実感できる時間や機会を提供していくことが政治の使命だと、私は考えています。