ダイバーシティについて

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 皆さまにとりまして幸多き年でありますよう祈念いたします。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 人には、人種、国籍、宗教、年齢、性格、障がい、性的嗜好、学歴、価値観等の様々な違いがあります。この一人ひとりが持つ違い、多様性をダイバーシティ(Diversity)といいます。19世紀半ば、米国のマイノリティ(人種、民族、宗教、権力差、経済差、性自認、性的指向などの少数派)や女性が、差別を受けない採用活動や公正な処遇の実現を求めた運動から広がりました。この運動を受けて、米国の企業も人材の多様性を認め、それを労働市場で積極的に採用、活用しようという企業経営(ダイバーシティ・マネージメント)を進めたことにより広まりました。

 我が国においても、平成27年(2015年)に、女性が職業生活で希望に応じて、十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するために女性活躍推進法(正式名称 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が制定された際など、米国同様に女性の働き方と結びつけて語られてきましたが、今はLGBT等の性的嗜好についての認知、理解、あるいは同性婚も含め、誰もがそれぞれの個性と能力を発揮でき、あらゆる人にとって暮らしやすく、多様性に富んだ活力ある社会の実現を意味するようになっています。そして今、このダイバーシティ推進に、都道府県では三重県やお隣の茨城県、市区町村では渋谷区や県内の千葉市等が力を入れています。

 さて、民主主義とは何でしょうか。「民主主義は最悪の政治形態といえる。これまで試みられてきた、あらゆる政治形態を除けばだが」これは、民主主義は最良の政治形態であると逆説的に言った、英国の名宰相・ウィンストン・チャーチルの言葉ですが、確かに多種多様な意見を聞く場を設け、議論を重ね、たとえ少数派の意見であっても、それを尊重し、その権利を擁護するといった、非常に手間のかかる政治形態です。しかしながら、この寛容、討論、譲歩を伴う、手間のかかる民主的過程を通してこそ、民主主義は成熟するのではないでしょうか。

 また、社会的な役割としての男女のあり方、「男らしさ」「女らしさ」といった通念をジェンダーといいますが、この「男らしさ」「女らしさ」の価値観に息苦しさを覚え、反発する人もいます。それを社会は尊重し、受け入れることが必要です。しかしながら、私のように「男らしさ」「男の美学」などといったものが背骨となり、行動規範として染みついている者も尊重し、受け入れる、それが民主主義における寛容さなのではないでしょうか。また少子化の時代、子どもを産み、育てる環境の整備等の子育て支援はもちろん重要ですが、LGBTや子どもを持たないという選択も尊重し、受け入れる寛容さも必要だと思います。

 誰もがそれぞれの個性と能力を発揮でき、あらゆる人にとって暮らしやすく、多様性に富んだ活力ある社会を目指すこと、これは民主主義の試金石でもあり、より多くの人が幸福を実感できる社会づくりに繋がっていると私は考えています。

 本年も、誰もがともに活躍できる平等な社会の実現に向けてしっかりと提言をしてまいります。