平成21年に我が国で発生した自殺の原因や動機が特定できたもののうち、健康問題が約65%です。その中で「うつ病」は約44%にも上ります。国の自殺対策についても、2006年に「自殺対策基本法」が成立し、翌年には「自殺総合対策大綱」が閣議決定されています。しかし、日本のうつ病患者の受診率は約2割しかありません。
厚労省の「過重労働とメンタルヘルス」というレポートには「過重労働にともなう心身の不調において、脳血管疾患及び虚血性心疾患等の身体疾患とともにメンタルヘルス不調が重要である。メンタルヘルス不調は、うつ病をはじめとする精神障害に至り、時には自殺企図にまで及ぶこともあり、効果的な対策を講じることが事業者に求められているのである」との記述もあります。そして、国の「自殺対策推進室」でも「長時間労働の抑制等仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進」の必要性を、企業に対して求めていくこととしています。
さて、そのワーク・ライフ・バランスについてですが、「生活を重視する」という誤解した認識で広まっている現実があります。仕事と私生活をなんとか両立させることでも、仕事を少なくして私生活の時間をふやすことでもありません。仕事と生活の双方が相乗する存在となり、公私ともに高め合うこと「仕事と生活の調和」が、真のライフ・ワーク・バランスの意味です。
先週お配りした「県政改革 休み方改革について」では、我が国の労働者の有給休暇の取得日数も取得率も、OECD加盟諸国の中で長年、最下位となっていることから、「休む時はしっかり休み、働くときは効率よく働く。オンとオフを切り替えて、短い労働時間でも高い生産性をあげるためには、まずは、休暇を取得しやすい環境を整え、それを許容する社会をつくっていくべきだ」と書かせて頂きました。
企業は、性別や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力に対し挑戦できる機会を提供し、子育てや親の介護が必要な時期など、働く人々の状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保させなければならないと思います。それによって働く人々は、自分が現在持ち合わせていない能力を新たに手に入れることも出来て、さらに意欲と能力が増すのではないでしょうか。
内閣府の「両立支援・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)推進が企業等に与える影響に関する報告書概要」では、既婚・独身を問わず、男女ともに「ライフ・ワーク・バランスが図れていると感じている人の方が仕事への意欲が高い」という結果が出ています。就業環境の改善は、従業員の離職や意欲低下の防止効果が期待できるということです。
ワーク・ライフ・バランスの推進には、経営トップの理解はもちろんのこと、働く人全員で進めていくことが大切です。「安心して生きられる社会の実現」には、そのための意識改革が必要なのではないでしょうか。