押し寿司、巻き寿司、ばら寿司、稲荷寿司、寿司にもいろいろ種類がありますが、寿司で代表的なものといえば握り寿司でしょう。握り寿司は別名「江戸前寿司」で、これは「Sushi」として世界的に広まっています。江戸前寿司の「江戸前」とは、お江戸の前面にある江戸湾(東京湾)でとれた魚介類を使っているという意味です。また、江戸時代の1824年に両国の小泉与兵衛(屋号は華屋、ちなみに和食のチェーン店名とは全く関係ありません)が握り寿司に初めてワサビを使ったことから、これをもって江戸前寿司の起源とする説もあります。
今、この江戸前、東京湾の漁業が危機に瀕しています。第一に漁獲量が減っています。それにはいくつかの要因がありますが、大きな要因として、度重なる青潮の発生が挙げられます。青潮が発生すると、海に酸素が十分に行き渡らず、魚介類を死滅させてしまいます。地球温暖化に伴い、海水温は今後も上昇し続ける可能性が極めて高いので、青潮の発生は益々頻発する可能性があります。また東京湾には多くの下水処理水が流れ込んでいます。東京湾の潮流は緩やかであるため、下水処理水である真水と海水がうまく混じらず、東京湾に真水の塊がいくつもできてしまい、魚介類が生息しにくい環境が増えています。今は東京で海苔は生産していませんので、江戸前寿司には欠かせない、伝統の浅草海苔の流れをくむ船橋特産の海苔は大変貴重です。しかし、船橋の海苔の平成15年の生産量は1万6千286枚でしたが、10年後の平成25年には7千98枚と半分以下に、アサリにいたっては平成15年、259万7千537㎏が平成25年には17万651㎏と10分の1以下に落ち込んでしまいました。
第二に漁業従事者の高齢化と後継者不足の問題です。船橋市漁業協同組合の組合員である漁業従事者は現在約130人ですが、そのうちの60歳以下の漁業従事者は約40人で、約7割は高齢者です。さらに燃料の価格が高くなると漁に出ても燃料代にもならないなど、漁獲量の減少と漁業収入が不安定であることがあいまって、漁業従事者が年々減っています。
「Sushi」は日本が世界に誇る文化でもあります。江戸前の魚介類と伝統の漁業が今、失われそうです。私は6月に県議会の本会議に登壇する機会を頂きましたので、この問題についても取り上げようと考えています。
平成28年5月15日 野田たけひこ