欧米の映画を観ると、登場人物が精神科医等に気軽に悩みを相談しているシーンをよく見かけます。
アメリカの警察官は、犯人を射殺した場合、直後に精神鑑定を受け、正常な精神状態であったか判断されます。危険や困難な状況に直面し彼らが抱えるストレスは多大で、ニューヨーク州には警察官の心のサポートを専門とする警察犬「ポリスセラピードッグ」がいるそうです。そしてアメリカ多くの職場では、福利厚生の一環として、社員のメンタルヘルスを定期的にチェックするためのカウンセラー等と契約しています。
欧米ではカウンセリングを受診した経験のある人は52%にも上り、精神科医療は身近な存在です。日本では6%という低水準です。先進国のなかで自殺者数が多く、精神科の受診率が低い日本はメンタルヘルス後進国といわれています。
うつ病の有病率については、欧米が20%~30%なのに対して、日本は10%程度で、これは本来、うつ病と診断されるべき人が病院に行っていないことの裏返しです。
我が国の場合、精神科、心療内科等を受診することに対して、大きなハードルがあるように思われます。うつ病は軽い症状でも休職もしくは退職となり、最悪のケースでは自ら命を絶ってしまうこともあります。そういった疾患を抱えている人が、社会的なプレッシャーや差別を恐れ誰にも相談できず一人で抱え込んでしまっているのが日本の現状です。平成29年の厚生労働省のデータでは、人口1万人あたりのうつ病患者数が全国で最も多いのは福岡県で182・10人、そして2位は千葉県の171・31人でした。
また、令和4年11月に公表された文部科学省の最新の資料によりますと、全国のいじめの認知件数は61万件超に上り、いじめ防止対策推進法が施行された平成25年度以降で過去最多となっています。学校では当然ながらいじめは良くないことだと教えています。しかしながら、一向にいじめは減りません。
欧米諸国では、いじめ加害者に対してカウンセリングやプログラムが提供されています。これらは、加害者の意識の向上、責任の受け入れ、共感力の養成、などにより、いじめ加害者の行動を変え、再発を防ぐために行われます。さらに、性犯罪者に対してもさまざまなアプローチが行われており、性犯罪者の再犯率を低減させることを目指してカウンセリングや治療プログラムが提供されています。
増え続けるうつ病問題や、学校のいじめ問題、性犯罪加害者の再犯防止等、様々な諸課題にもっと精神科医療のアプローチが必要です。
私は、精神保健の重要性を認識し、精神科医療を気軽に受診できる環境を整え、様々な問題の解決のための道を開きたいと考えています。