生活を脅かす相次ぐ値上げに、ついつい『お金持ちになれたら…』と考えてしまうこともあるのではないでしょうか。
資産が1億円以上5億円未満を「富裕層」、5億円以上を「超富裕層」といいますが、野村総合研究所の「2023年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模」の推計結果によりますと、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いた「純金融資産保有額」は、「富裕層」「超富裕層」を合わせると148・5万世帯で、我が国の全世帯の約2%が該当し、その資産保有総額は364兆円といわれてます。平成17年(2005年)の我が国の「富裕層」「超富裕層」世帯は約87万世帯ですから、ここ10数年でほぼ倍増しました。そして、安倍政権の経済政策「アベノミクス」が始まった2013年以降、一貫して増加を続けています。
富裕層になれる年収の目安としては2000万円以上とされていますが、厚労省の「国民生活基礎調査」によりますと、令和3年(2021年)の1世帯当たりの平均所得は545万7000円で、前年より3.3%の減少です。また、200万円から300万円の世帯が14・6%と最も多く、平均所得以下の世帯は全体の61・6%でした。これは高齢世帯や単身世帯が増えたことや、若年層の正規・非正規労働の分化による所得の伸び悩み等によるものとされています。そして「純金融資産保有額」どころか、2人以上世帯の3割、単身世帯の5割が貯蓄なしというのが我が国の現状です。
また、厚労省は、おおむね3年に1度公的年金などの社会保障や税による再分配で所得の格差がどの程度改善されているのかを明らかにするために「所得再分配調査」を行っています。最新の令和3年の調査では、所得の格差は過去最大だった平成26年(2014年)の調査に次ぐ水準だったとのことです。今年発行される新一万円札の顔になる渋沢栄一が残した『能(よ)く集め、能(よく)く散ぜよ』という名言がありますが、約2%の「富裕層」「超富裕層」世帯がどんなに贅沢に消費しても、経済の活性化に与える影響には限りがあります。そして、この「格差の是正」が喫緊の課題です。
内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によりますと、2020年、65歳以上の1人暮らしは671万7000世帯で、そのうち将来に備えるお金がある1人暮らしの高齢者は7割、残り3割は余裕がまったくない状態だそうで、「生きていくだけで精一杯」という厳しい状況です。
私は「貯蓄に頼らない社会」を構築し、人生を楽しむために、安心して暮らせる世の中をつくっていかなければならないと考えています。