避難所QOL(生活の質)向上事業について 

 建物の倒壊や火災、津波などの災害による直接的な被害ではなく、避難者が長期にわたる不便な避難所生活を余儀なくされた結果、避難者に体力低下や持病悪化などの健康被害が生じ、脳卒中や心不全、肺塞栓症などを発症し、死亡することを「災害関連死」といいます。

 災害における死亡者総数のうちの災害関連死の割合は、
・阪神・淡路大震災における兵庫県の死亡者総数6,402人のうち919人(約14.3%)
・新潟中越地震の死亡者総数68人のうち52人(約76.4%)
・東日本大震災の死亡者総数19,630人のうち3,676人(約18.7%)
・熊本地震の死亡者総数267人のうち212人(約79.4%)

 災害関連死をなくすためには、避難所のあり方を変えなければなりませんが、日本の避難所といえば、体育館で雑魚寝をするという、国際的にみて劣悪な環境にあると言えます。赤十字社は、紛争や災害の際の避難所の環境水準を定めた国際基準「スフィア基準」を定めていますが、日本の避難所は1人当たりの居住空間など、多くの点でスフィア基準に達していません。
 さて徳島県では、「避難者の尊厳ある生活を確保」と「災害関連死ゼロ」を目指し、平成27年より全国に先駆けて「避難所QOL向上事業」を展開しています。そして徳島県では、スフィア基準導入を目指し、避難所運営や支援を行う市町村職員、社協職員、災害時コーディネーター等に対する研修も実施しています。
 6月5日に開会される県議会では、この徳島県の「避難所QOL向上事業」も例示にして、本県でもスフィア基準を念頭に、避難所のあり方を変えるべきだと提言したいと考えています。
 千葉県を「くらし満足度日本一」にすることが森田知事の公約ですが、森田知事におかれましては、家を失い、仕事を失い、これからの人生に不安を抱いている方々が、雨風をしのぐことだけではなく、避難生活においても、楽しむ心、そして、これから先の未来に気持ちを前向きに持っていけるような、日本一の避難所整備にも取り組んで頂きたいと考えています。

令和元年5月20日        野田たけひこ

*スフィア基準・・・災害や紛争などの被災者すべてに対する人道支援活動を行う各種機関や個人が、被災当事者であるという意識をもって現場で守るべき最低基準の通称。具体的には、人間の生命維持に必要な水の供給量、食糧の栄養価、トイレの設置基準や男女別の必要数、避難所の一人当りの最小面積、保健サービスの概要などの詳細が定められており、避難所などの現場で参照される指標となっている。