高齢者虐待について ―福祉サービス第三者評価制度の改善―

 川崎市の老人ホーム、Sアミーユ川崎幸町で高齢者3人が相次いで転落死した事件で、先月の15日に元職員が逮捕されました。元職員の供述によりベランダから投げ落とされたことが明らかになりました。元職員は昨年の5月に施設内で入所者から金品を盗んだ罪により、警察に逮捕され、既に懲役2年6カ月執行猶予4年の判決も受けています。また、この施設では入所者が日常的に職員から虐待を受けていた疑いも持たれています。

また、事件のあったSアミーユ川崎幸町は、夜勤5回、精勤手当、日祝手当等込みで月給20万1,700円から、賞与は2ヶ月という条件ですが、介護職員として無資格・未経験でも応募が可能でした。そして、平成27年8月末時点で常勤の介護職員数は29人でしたが、平成26年度に11人が会社を辞め、7人が系列施設へ異動したため、常勤職員の6割ほどが1年で入れ替わったことになります。

ところが驚くべきことに、週刊ダイヤモンド編集部発行の「全国・有料老人ホームランキング1001」には、事件のあったSアミーユ川崎幸町の系列の老人ホーム、4施設が同点で10位にランクインしています。何を信じて高齢者福祉施設を選ぶのか、利用者が判断するモノサシが必要です。いささか違うかもしれませんが、進学の際には学校の偏差値がひとつの目安になります。同様に高齢者福祉施設などにも、それぞれの施設を客観的基準により評価し、それが利用者に分かるようにしなければなりません。

現在、国のガイドラインに基づき、千葉県などの都道府県において、事業者が提供する福祉サービスの質を、事業者および利用者以外の公正・中立な民間の第三者機関が、専門的かつ客観的立場から評価するという「福祉サービス第三者評価」の制度があります。それは事業者のサービス向上のための支援と利用者への情報提供になっており、それ相応に役立っていますが、問題点もいくつかあります。先ず事業者が第三者機関の評価を受けるのは任意であるため、良質なサービスを提供できない事業所は評価を受けない。事業所の管理者が立会いのもとでの調査となるため、日常のサービスと違う可能性がある。利用者が評価結果を見たときに分かりづらいなどが挙げられます。しかし、せっかくこのような制度があるのですから、評価を受けるのは任意ではなく義務付ける。ランキングを付け公表する。など、「福祉サービス第三者評価」の問題点を改善・改良し、皆さまに広く周知できるようにしたいと考えています。