米の増産実現について

 記録的な猛暑が続く中、茨城県内では8月から新米の収穫が始まっています。しかしながら、収穫された米は白く濁るなどの品質低下が見られ、一等米(米の外観、粒の大きさ、着色米の有無等を目視検査で調べ、優良と認められた米)の比率が大きく下がるという影響がすでに出ています。

 茨城県によると、今年の一等米の比率は約80%と、昨年より15ポイントほど低下しているとのことです。

 こうした傾向は茨城県に限ったことではなく、米の収穫量日本一の新潟でも一等米の割合が大幅に減少しており、全国的に深刻な状況となっています。

 そもそも、水稲の生育に最適とされる水温は25℃前後ですが、今年の猛暑によって田んぼの水温が風呂並みに上昇し、稲の生育環境が大きく悪化しています。

 その結果、たとえ収穫量が昨年を上回ったとしても、品質の低下により精米時に出荷できなくなる米が増えるので、一等米の価格が今後上昇するのではないかと懸念されています。

 そのような中、石破茂首相は8月5日の関係閣僚会議において、米の増産方針を表明しました。これを受けて、農林水産省も来年度予算の概算要求に、米の増産実現を盛り込む方向で検討しているとのことです。

 また農林水産省は稲作農家に対して、高温に強く収穫量の多い新品種への切り替えを促進するとともに、米の輸出拡大も支援するとのことです。

 しかしながら、国が米の増産を進める上では、単に高温に強く収穫量の多い新品種への切り替えを進めるだけではなく、解決しなければならない様々な課題があります。そのひとつが、稲作農家の担い手不足です。

 農林水産省の統計によりますと、令和6年の農業従事者の平均年齢は69・2歳に達しており、高齢化と離農が進む中、深刻な担い手不足が続いています。その結果、全国の耕作面積(田んぼ)231・9万ヘクタールのうち、57万ヘクタールが耕作放棄地等、未利用となっています。(令和6年度 農林水産省統計)

 担い手不足の理由として、稲作による収入は低く、家族労働を含めても年収は278万円程度であることが挙げられます。この収入では生活が成り立ちません。

 そして、このような農業の弱体化は、我が国の食料自給率の低さにも繋がっています。欧米諸国の多くのでは食料自給率は100%を超えているのに対し、我が国の食料自給率は38%にとどまっています。

 このような現状を踏まえ、我が国も欧米のように、農業従事者への十分な補助制度を整備する必要があります。私は、減反政策を見直し、米の価格変動リスクに対応できる制度の構築とともに、稲作農家を含むすべての農業従事者が安定して経営を続けられるよう、個別補償の導入が必要だと考えます。