気候変動による漁業への影響

 昔から「暑さ寒さも彼岸まで」と言われますが、今年は、その言葉も当てはまりそうにはありません。9月に入っても厳しい残暑が続き、9月2日の新聞によれば、今年の夏(6~8月)は全国の平均気温が平年より2・36℃高く、観測史上最も暑い夏となったそうです。

 さて、今回の「県政改革」は気候変動による漁業への影響について取り上げます。

 まず、千葉県の漁業についてですが、本県は令和3年度には海面漁業漁獲量で全国7位(105,505トン)、水産物の生産金額では全国6位という実績です。

 特に、スズキ類、イセエビ、キンメダイの漁獲量は全国1位、ぶり類も全国2位と、千葉県は全国有数の漁業県といえます。また、銚子漁港は令和4年まで12年連続日本一の水揚げ量を誇っています。

 それでは、漁獲量全国1位のイセエビについてですが、外房の大原漁港(いすみ市)は全国有数のイセエビの好漁場として知られ、「外房イセエビ」のブランド名も認定されています。なぜ、この地域で高品質なイセエビが獲れる理由としては、親潮と黒潮が交差する近海に、魚介が豊富な器械根と呼ばれる磯根が広がっているからです。

 「イセエビ(伊勢海老)」の名の通り、かつては三重県(伊勢)が本場とされていましたが、近年では漁獲量は減少傾向にあり、過去最高だった平成27年(2015年)と比べ、近年では半減近い水準に落ち込んでいます。

 その原因として、藻場(イセエビの餌や隠れ家)の減少による「磯焼け」や、藻類を食べるウニやアイゴなどの「食害生物」の増加が挙げられます。

 さらに深刻なのが、気候変動による海水温の上昇です。イセエビは20度前後の水温を好むことから、生息適地の北限は茨城県沖とされてきましたが、その範囲が年々北上しています。このまま海水温の上昇が進めば、千葉県の海域も生息適地でなくなる可能性があります。

 実際に、イセエビの生息適地の変化は既に顕著に現れています。宮城県南三陸町では、かつてはほとんど水揚げがなかったイセエビの豊漁が近年急増しており、今年度は特に豊漁で、4月以降の水揚げ量は約640キロに達し、既に昨年度の3倍以上だそうです。

 このように気候変動は水産資源の分布や漁獲量に大きな影響を与えており、千葉県の漁業者の生活や地域経済にも大きな影響を及ぼす恐れがあります。

 今後は、海産物の生息状況や漁獲量の変化を継続的にモニタリングし、気候変動の影響を把握すること。そして、新たな漁業資源の調査や、それに伴う漁業技術の開発にも積極的に取り組む必要があります。