カレーライス物価指数

 10月6日の定例記者会見において、経団連会長は「経団連は賃金引上げを起点に、成長と分配の好循環を回していく必要があると考えており、『社会的責務』と位置付け、賃金引上げの力強いモメンタム(勢い)の継続・定着に取り組んでいく。政府の支援については、易きに流れることなく、自立的な経営努力を促す形で、特に中小企業が原資を安定的に確保し、継続的な賃金引上げが可能となる環境整備が求められる」と述べています。

 このように、賃金の引き上げは労働者側だけでなく、経営者側からも、その必要性について、様々な場面で語られるようになってきました。もはやこれは、国全体で取り組むべき喫緊の課題となっていると言えるでしょう。

 実際、こうした動きの中で、働く人たちの賃金はこの10年、ゆるやかに上昇してきました。

 しかしながら、実質的な可処分所得(収入から税金や社会保険料などを差し引いた、自由に使えるお金)は、税金や社会保険料の増加、物価上昇に追いつけず、減少傾向にあります。

 物価の上昇をより身近な視点で可視化することができる、「カレーライス物価指数」という指数があります。これは、帝国データバンクが公表している指標で、家庭でカレーライスを作る際の材料費や光熱費などを基に、1食当たりのトータルコストを示すものです。10年前の2015年5月時点では、1食当たり260円、昨年、2024年は平均して1食365円(約7割上昇)、2025年5月にはついに 441 に達し、過去10年間で最高値となっています

 この1食当たりのコストの上昇は、米の品薄や高騰、野菜(ニンジン、ジャガイモ、タマネギ等)、肉の価格上昇、さらに食用油も原料価格の高騰と製造・物流コストの上昇、電気・ガス料金も世界的なエネルギー価格高騰等の影響によるものです。

 カレーライスは、子どもに最も人気のある家庭料理であり、学校給食でも常に人気第1位の「国民食」とも言える存在ですが、実質的な可処分所得の減少は、そのカレーライス1食分にも暗い影を落としています。

 日本人の家計(消費支出)おける食料費の支出割合(エンゲル係数)も、物価上昇の影響を如実に示しています。10年前の2015年は23・6%、昨年2024年は28・3%、となりました。(総務省「家計調査報告」2025年2月より)この28・8%という数値は、1981年(28・8%)以来、実に43年ぶりの高水準です。

 食料品の消費税についても、議論すべき時期に来ています。現在、英国は標準税率(消費税)は20%ですが、食料品については0%です。カナダ、オーストラリアも標準税率(消費税)は10%で、食料品は0%です。このように、海外では生活必需品である食料品の税率を免除する国が多くあります。我が国も食料品の消費税は0%にする前提で議論を進めていくべきです。