「定数内不合格」の問題について

 2006年12月、国連総会において「障害者の権利に関する条約」が採択され、我が国は2007年9月に同条約に署名し、2014年1月に批准しました。また、2006年の教育基本法改正においては、「国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。」(第4条第2項)との規定が新設されました。

 そして、東京2020オリンピック・パラリンピックでは、大会コンセプトとして、人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩するとして、「多様性と調和」を掲げました。

 さらに2022年には、国連が日本に対し、障がいのある子どもにとって、人生経験や人間関係、社会経験の機会を奪ってしまう可能性があるとして「分離教育(難病や障がいのある子どもとそうではない子どもを切り離し、別々の環境で教育する仕組み)」を止めるように勧告しました。

 しかし、文部科学省が行った2023年度全国の公立高校入試入試の調査によると、定員内不合格者は、1,631人で、人口の多い8都道府県のうち、千葉県のみが56人という結果でした。そして先月、合否判定で障がい者差別があったなどとして、2家族が千葉県弁護士会に人権救済を申し立てました。試験は受けさせてくれるものの、入学希望者が高校の募集定員を満たしていないにもかかわらず、障がい者を不合格にしてしまうという「定数内不合格」が問題となっています。

 先月19日、私が所属する「立憲民主党千葉県議会議員会」の代表質問で、県立高校の入試における「定数内不合格」の問題を取り上げました。代表質問では「障害を持ちながらも、学ぶ意欲があるにもかかわらず、学習の場を与えられない生徒・子どもについて、県教育委員会はどのように考えるのか」という質問をしました。

 それに対し、県教育長から「県教育委員会では、引き続き、各高等学校の校長に定員を遵守するよう指導するとともに、学ぶ意欲や受験時点での実力がより一層発揮できるような体制づくりに努める。また、あわせて一人一人の教育的ニーズに的確に応えられる学びの場の充実を図っていく」旨の答弁がありました。

 私は現在、健康福祉常任委員会の委員ですので、「障害者に対して不当な差別的取扱いを行うこと」が禁止されてる「障害者差別解消法」、国や公立学校を含む地方公共団体に課せられている「合理的配慮の提供義務」、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」、本年から施行された「多様性推進条例」の観点からこの「定数内不合格」の問題を取り上げる所存です。

 文科省が推奨する「インクルーシブ教育(障がいのある者と障害のない者が共に学ぶ教育システム)」は、「共生社会」を目指すために最も積極的に取り組むべき課題であり、障がいの有無にかかわらず、多様な生き方を認め合う社会をつくるためには、次世代を担う子どもたちへの教育を通じて築いていくことが重要ではないでしょうか。