いじめをなくす その4

子どもの頃にいじめを受けた700人にアンケートしたところ、そのうちの約6割が「大人になった今も日常生活に何らかの影響がある」と答えた「いじめ後遺症」は、NHKの朝の番組で取り上げられ、大きな反響がありました。番組では、容姿のいじめをきっかけに何十年も「摂食障害」に苦しむ女性や、いじめを20年後に突然思い出して「対人恐怖症」に陥った女性のケースが報告され、多くの精神科医がその深刻さを訴えていました。また、いじめ被害者のその後を追ったイギリスの調査では、40年たってもうつ病へのなりやすさや自殺傾向が、いじめられていない人と比べてかなり高くなることが疫学的に明らかになっているとのことです。さらに、最新の研究では、いじめなどの幼い頃のストレスが、脳の形や機能に影響を及ぼす可能性も指摘されています。
「いじめ後遺症」の特徴は、被害者の多くが自分にいじめられる原因があったのではないかと思い込み、自分を責める「自責の念」を強く感じ、自分を大事に思う気持ち「自尊感情」を低下させ、その自尊感情が傷つけられると、生きているのがイヤになり、自傷行為や摂食障害に及ぶこともあります。
また先月、金沢市教育委員会が、市立小・中・高校の全児童・生徒約3万5000人を対象に実施した、『いじめに関するアンケート』では、小学生と中学生のそれぞれ約3割が「いじめられる人も悪いところがあると思う」と答え、そして学年が上がるにつれて「いじめの原因が被害者にもある」と考える傾向が強まると報道されました。
千葉県でも同じアンケートを実施したならば同様な結果になるかもしれません。児童生徒が「いじめられる人も悪いところがあると思う」というのは、加害者が本心ではいじめたことを反省しておらず、とりあえず今は謝罪をしておこうということや、教育現場が、加害者の謝罪をもって「いじめの解決」としてしまうことに繋がります。そして、これは文科省の「いじめ防止対策推進法の施行状況に関する議論の取りまとめ」の中の「いじめが解消に至っていないにも関わらず、謝罪をもって解消とし、支援や見守りを終了するケースがある」という記述にも符号します。
加害者が、いじめられる人も悪いところがあると思う。被害者は、自分にいじめられる原因があったのではないかと思い込み、自分を責める。加害者がいじめたことを反省せずに忘れ、被害者はいじめ後遺症でずっと苦しみ続ける。そんな理不尽なことは、あってはなりません。

平成29年2月26日     野田たけひこ