昔から教育は「国家百年の計」といいますが、今、千葉県の教育は深刻な状況に陥っています。
少子化の進展により子どもの数は減っていますが、いじめや不登校の件数は増えています。令和3年度に千葉県内の公立学校で認知されたいじめは、都道府県別では全国ワースト3位の51,478件(前年度比11,248件増)でした。また不登校の児童生徒も初めて1万人を超え、過去最多となりました。
また昨年1月、文科省が公表した「公立小中高・特別支援学校の教員不足の実態に関する全国調査」の結果によると小学校の場合、教員不足の学校の数が、全国1位は千葉県(84校)、2位は福岡県(61校)、教員不足数も、全国1位は千葉県(91人)、2位は福岡県(69人)です。これからの人間形成にとって小学校は重要な入口です。
教員がいないのに、子ども一人ひとりに向き合った質の高い教育ができるわけがありません。それが急増しているいじめや不登校を解消できない、ひとつの要因です。
さて、文科省の「いじめ解消の定義」は、①いじめの行為が止んでいること(少なくとも3か月間)。②被害を受けた子どもが心身の苦痛を感じていないこととしています。
もちろん、この定義の通り、いじめはすぐにやめさせなければなりません。また、いじめを受けた子ども(いじめ被害者)の傷ついた心のケアをし、いじめ被害者が安心して学校で学べる環境をつくることが最優先です。しかしながら、この「いじめ解消の定義」には欠けているものがあります。それは、いじめた子ども(いじめ加害者)への学校の対応についてです。
学校では、いじめ加害者がいじめ被害者に謝罪し、しばらく様子をみて、そこでいじめが再発していないようであれば、いじめは解消したと判断するのが通例ですが、いじめ加害者の抱える問題を解決してはいません。
アメリカやフランスでは、いじめ加害者がいじめに至ったのは、医学的要因であることも想定します。そして学校は、いじめ加害者に精神科医のカウンセリングを受けさせ、スクールカウンセラーは、その診断も参考に他者への共感力を高めるトレーニングや怒りのコントロールのカウンセリングをしています。
いじめ被害者のいじめ再発への不安解消のため、そして、いじめ加害者が将来、また誰かをいじめるのを防ぐために、私は、このいじめ加害者に係るカウンセリング・プログラムの導入を千葉県に提言しています。いじめ加害者の言い分もよく聞き、いじめ加害者が抱える心理的・社会的問題等も解決しなければ、いじめの解消には至らないのではないでしょうか。
そして、子どもを人の悲しみや痛みを理解するように導くことは、その子が将来、人に愛される人になるかどうかにつながるのではないでしょうか。