内閣府・男女共同参画局が昨年5月に発行した広報誌「共同参画」に「我が国における男女共同参画の取組の進展が未だ十分でない要因の一つとして、社会全体において固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が存在していることが挙げられます」としています。
アンコンシャス・バイアスとは、「無意識の偏ったモノの見方」「無意識の思い込み」「無意識の偏見」のことで、誰もが潜在的に持っている思い込みのことです。たとえば「お茶出し、受付対応、事務職、保育士というと女性を思い浮かべる」「親が単身赴任中というと、父親を想像する」「定時で帰る人は、やる気がないと思う」「DVと聞くと男性が暴力を働いていると想像する」等が挙げられます。しかしながら、アンコンシャス・バイアスという言葉の認知度は、まだ21.6%だそうです。
男女共同参画局が昨年の9月に公表した調査によると、職場では、「男なら残業や休日出勤をするのは当たり前だ」「仕事より育児を優先する男性は仕事へのやる気が低い」などと、男性はどんな時でも仕事を優先すべきという固定観念にとらわれている傾向にあり、「事務作業など簡単な仕事は女性がするべきだ」「女性は正規雇用にこだわらなくてもいい」「育児中の女性は重要な仕事を担当すべきではない」などと、昭和の「働く女性=OL」という意識が根強く残っているようです。この傾向は、役職が高いほど性別役割意識が強い傾向にあるそうです。
家庭や地域では、「家事・育児・親の介護は女性がするべきだ」「PTAには、女性が参加するべきだ」「自治会や町内会の重要な役割は男性が担うべきだ」この傾向は、男性も女性も年齢が高くなるほど強く表われ、いまなお地域の慣習や風習の中にある「家」という意識が残っているようです。
教育では、「女性には高い学歴やキャリアは必要ない」「女性には理系の進路は向いていない」などがあげられ、高校までの進学率は男女でほぼ同じですが、大学になると男子が高くなり大学院では男子は女子の2倍の進学率になっています。「良妻賢母」「女の子だから」「女の子のくせに」などと、子ども時代の成長過程で意識形成された結果だとされています。
新型コロナ感染症により、多くの非正規雇用の女性が失業に追い込まれたり、休校となった子どもの面倒をみるため仕事を休まざるを得なくなったり、テレワークなどの在宅勤務の普及により配偶者などからのDVが増加しています。さらに、昨年は、自ら命を絶つ働く女性の割合も増加しました。また、高齢者や非婚者などの孤立も問題となっています。
職場・家庭・地域・教育の制度や慣習、しきたりなどは、昔から続いているため、当たり前のように行われていますが、時代に合わなくなったものは思い切って変えていくことも必要ではないでしょうか。また、アンコンシャス・バイアスに気づこうと一人ひとりが意識し、「男らしさ」「女らしさ」ではなく「その人らしさ」な多様性のある社会の実現に向けてこれからも提言して参ります。