8月14日の報道によりますと、病院でクラスターが発生した茨城県水戸市で、感染者の濃厚接触者ではない医療スタッフが、学童保育や保育所から子どもの利用を断られ、医療スタッフの配偶者も職場から出勤停止を命じられたとのことです。
また8月21日には、ラクビー部で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した奈良県天理市の大学で、ラグビー部と関係のない一般学生が教育実習の受け入れ先に予定されていた中学校、高校から「報道を見た地域住民や保護者が不安を感じるので、受け入れを中止したい」「PCR検査で陰性だったら受け入れる」との連絡を受けたり、やはりラグビー部と関係のない一般学生がアルバイト先から「クラスターが発生した大学の学生なので、しばらく出勤を見合わせてほしい」と告げられたとのことです。
その翌日の8月22日にも、サッカー部員ら約100人が新型コロナウイルスに感染した島根県松江市の高校に、「日本から出て行け」「学校をつぶせ」等、学校への批判や生徒を中傷するような電話が多数あり、ネット上でも生徒の顔が確認できる写真が無断で投稿され、そのサイトには生徒や学校への誹謗中傷のコメントがあったとの報道がありました。
こうした中、8月25日には文科省が「新型コロナウイルスには誰もが感染する可能性があり、感染した人が悪いというわけではない」「感染した人を責めるのではなく、励まし、暖かく迎えてほしい」旨の緊急メッセージを発しました。また地方自治体にも感染者等への差別をなくし、人権を守るための条例制定の動きが広がっています。
コロナ感染者やその家族に誹謗中傷が起き始めた4月上旬、コロナ差別解消を目指して愛媛県松山市の市民や松山大学の教授らによって「シトラスリボンプロジェクト」が発足しました。地域・家庭・職場や学校を象徴する「3つの輪」をかたどった「シトラス(愛媛県特産の柑橘類、薄緑色)リボン」をつけることで、新型コロナウイルスに感染した人やその家族、医療従事者等に「私は応援しているよ」という気持ちを伝えることと、感染者が差別を受けにくい環境を整える目的で始まったプロジェクトです。「自粛警察」が人々を監視し、過度に干渉したり、感染者を差別したり、責め続けるのであれば、人々はそれを恐れて感染したことを言えなくなり、むしろ感染拡大を招く可能性もあります。「シトラスリボンプロジェクト」は、声高な主張ではなく共感を軸にして無理なく主張せず活動していくことを目指しているそうです。
この運動は、趣旨に賛同した方がシトラスリボンを手作りして、自ら身につけたり、またお知り合いにプレゼントすること等により、感染者が差別を受けにくい環境を整えていこうというものですから、この運動に参加するのに特に難しいことはありません。そして今、個人のみならず全国の企業や自治体にも賛同者が増えています。皆さまもぜひ「思いやりの輪」を広げていきましょう。
令和2年8月30日 野田たけひこ