テントを活用した避難所運営

 3月11日、東日本大震災から12年めを迎えます。東日本大震災では岩手、宮城、福島の3県を中心に全国でピーク時、過去最多の約47万人の避難者が発生し、避難所も、阪神・淡路大震災の1,874箇所を超える、やはり過去最多の2,417箇所が開設されました。

 今までの日本の一般的な避難所といえば、体育館に大人数で共同生活をし、床に直接ふとんを敷いて雑魚寝をし、プライバシーもなく、お互いに物音を立てないよう細心の注意を払う。汚くて臭いトイレに行くのが嫌で、水分をとるのを控えて脱水症状を引き起こしてしまう等、災害関連死を誘発しかねない環境でした。当時に比べ、今はかなり改善されましたが、それでも諸外国の避難所レベルに達していないというのが実情です。

 日本と同様に地震が多発するイタリアでは、2009年のラクイラ地震で約6万3千人が家を失いましたが、48時間以内におよそ畳10畳分の広さでエアコン、個別ベッド、コンセント等を完備した6人用テントを約3千張、1万8千人分を設置し、最終的にこのテントを約6千張、3万6千人分設置しました(約3万4千人は、国の宿泊費負担による、ホテルでの避難を指示されました)

 平成28年の熊本地震の際には、様々な事情があったのでしょう。避難所ではなく車中泊をした方々が多数おられましたが、その方々の中でエコノミークラス症候群で亡くなったという方も多数おられました。車中泊は、プライバシーは保てるものの、手足をじゅうぶん伸ばすことができず、エコノミークラス症候群を発症させる危険性があります。この地震での犠牲者の80%は災害関連死です。やっとの思いで避難して、一度は助かった命が再び危険にさらされ、命を落としてしまう原因は、長引く避難生活で直面するさまざまなストレスや体調の悪化といわれています。

 またこの際、熊本県益城町はNPOと協力して、わずか150張でしたが、町に避難者の「テント村」を開設しました。テント泊はプライバシーの保持と共に、手足を伸ばして寝るスペースも確保できます。そして約1か月の避難生活の中で、このテント村からは、災害関連死で亡くなるという方は1人も出ていません。

 このようなことから、平成30年9月定例県議会における会派代表質問で、私は県に対し、テントを活用した避難所運営を提言しています。

 国は現在、市町村があらかじめ指定した避難所に滞在することを原則とし、車中泊やテント等を活用した避難を勧めてはいません。しかしながら、東京湾北部地震M7が発生した場合、約470万人の避難者が発生すると想定しており、その際の避難所不足を解消するため、天幕・テント等を活用しなければならないと考えています。

 今、アウトドアブームでキャンプ場にテントを張って、自然を満喫するアウトドア愛好家が増えています。私は、テント泊等、災害時の避難所に係る選択肢を広げるべきと考えています。