先日、特別養護老人ホームにおける高齢者虐待問題をテーマとする勉強会に出席しました。そこでオムツ換えの際に頬をたたかれる高齢者、ベッドや車椅子に縛りつけられている高齢者、布団部屋に放置されている高齢者、人前で裸にされている高齢者等の特別養護老人ホームにおける高齢者虐待の写真を見ました。また日常的に虐待を受けていた認知症のおばあちゃんが、とても小さな文字で机に書いた「○○ちゃん。今日も朝が来た。人として生きたい」という妹へのメッセージを遺していた話も聞きました。
2013年に全国の自治体が高齢者に対する虐待で通報を受けた事例をまとめたものを見ますと、介護施設内における高齢者虐待に関する相談や通報件数は、前年比30.7%増の962件。そのうち「虐待である」と判断されたものは、221件にのぼりました。これも前年比で42.5%の大幅増となるだけでなく、同調査を始めた2006年のおよそ4倍、過去最多だとのことです。
私も経験上、介護の苦労というものは分かります。誰もがマザー・テレサのように慈愛に満ちた態度で、常に高齢者に接するということは、なかなかできないでしょう。そして時に、高齢者への接し方がぞんざいになることもあるでしょう。しかし「人としての尊厳」を踏みにじるようなことは許されません。介護保険法第一条は、この法の目的についての規定ですが、その中に「尊厳の保持」という言葉が出てきます。つまり介護を受ける者の尊厳を守らなければならないということです。
高齢者虐待が増加の一途であることから「高齢者虐待防止法」が成立しましたが、この法律は基本的に通報がなければ虐待への対応ができないもので、虐待防止法を実効性のあるものにするためには、通報だけに頼らない新たなシステムの導入が必要です。そもそも、特別養護老人ホームの高齢者の多くは、認知症でうまく意思表示ができず、抵抗もできない方々です。自ら通報するのは極めて難しいのです。
私は特別養護老人ホーム等の高齢者福祉施設や障害者福祉施設に、第三者機関が定期的に、時には抜き打ちで、虐待の有無や不適切な業務が行われていないか調査し、改善勧告・指導が行えるようなシステムをつくりたいと考えています。そして、それぞれの施設に評価点をつけるシステムもつくりたい。進学の際には学校の偏差値がひとつの目安になりますが、高齢者福祉施設や障害者福祉施設にも、そのようなものが必要なのではないでしょうか?