平成30年に厚生労働省が公表した試算では、令和7年度時点に必要な介護職員数に対し、千葉県が確保できる職員の見込み割合(充足率)は、全国47都道府県の中で福島県と並んで最も低く、74・1%で、約2万8千人の職員が不足すると見込まれています。高齢者が急増するなか、介護人材の確保は本県にとって喫緊の課題です。
介護事業所における「職場の人間関係」について、平成30年に実施されたUAゼンセン日本介護クラフトユニオンによる全国のアンケート調査によると、働く上での不安から離職を考えたことがある人の、理由と割合は、1位「上司や利用者・家族のハラスメント」(93・2%)、2位「利用者・家族との人間関係がうまくいかない」(76・9%)、3位「事業所内の人間関係がうまくいかない」(76・7%)です。セクハラ、パワハラ等、何らかのハラスメントを受けたと回答した人は全体の7割を超えています。そのことからも、離職に直結しやすい介護事業所におけるハラスメント対策は、人材確保の上で非常に重要であることが分かります。
介護事業所において利用者やその家族によるハラスメントが横行する理由として、
・高齢に伴う機能低下や持病の影響で、体に痛みや不調を感じていても、それをうまく言葉で伝えることができず、不安やイライラが募ってしまう。また、認知症に伴う脳の機能低下により、感情のコントロールが効かなくなり、負の感情をむき出しにしてしまう。
・「男尊女卑」「職業蔑視(介護職を見下す)」「過度の顧客意識(カスタマーハラスメント)」等のパワーバランスの偏り。
等が挙げられます。
これらの理由を鑑みると、ハラスメント対策で介護サービス利用者である高齢者に厳しい対応はとれないと考えます。しかしながら、介護サービス利用者やその家族へのハラスメントに係る啓発も必要ではないでしょうか。
介護職は身体的・精神的に負荷の大きい仕事であり、業務量や人手不足などの要因からストレスが蓄積しやすい環境です。エネルギーを消耗する仕事であり、長時間の勤務や重責により職員のバーンアウト(燃え尽き症候群)が生じることがあるといわれています。また、職場内のコミュニケーションの不十分さや不適切さが、人間関係の悪化や誤解を招き、摩擦や不満の表出、ハラスメント行為の増加につながる可能性があります。
令和元年度から県は、外国人介護人材の就業促進等に総合的に取り組むために「外国人介護職就業促進事業」を始めましたが、私は文化や生活習慣、あるいは価値観等、様々な違いを持った外国の方々が、日本語の習熟度もあり、必要以上に介護現場で苦労するのではないか、あるいは理不尽な差別や偏見、ハラスメントを受け、日本を嫌いになり、短期間で帰国しないだろうかと危惧しています。
ハラスメントの予防と改善には、適切な管理・監督体制の確立、職員の教育・訓練、オープンなコミュニケーションの促進などの取り組みや、外国人介護人材が円滑に業務を遂行できるよう、適切なサポート体制を整備することが重要です。