介護事業所におけるハラスメント対策について

 「2025年問題」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。日本において高齢化が進む2025年頃に、高齢者が急増することによって生じるさまざまな問題です。75歳以上の高齢者人口が約3,700万人に達すると予想されており、その際には千葉県内でも高齢者の介護のために10万人以上の介護職員が必要となります。しかし、県内では約7千人の介護職員が不足しており、このペースで進むと、高齢者人口がピークを迎える17年後の令和22年度には、介護職員不足が県内で約3万1千人に達する見込みです。

 介護人材不足に危機感を持った県は、令和元年度に外国人介護人材の就業促進等に総合的に取り組むため、「外国人介護職就業促進事業」を始めました。また、本年度には市町村や事業者等に対して、介護人材の確保・定着に向けた取り組みを実施するための「千葉県介護人材確保対策事業費補助金」を立ち上げ、対象事業の実施に係る経費を助成し、介護人材確保に力を注いでいます。

 しかしながら、それらの事業等の努力の末、介護人材をようやく確保したとしても、その方々がすぐに介護の現場を離れてしまうと、その努力は水疱に帰してしまいます。

 県内の介護事業所における介護職員の離職率は、令和2年度は19・9%でした。これは県内の他の産業の平均離職率16・8%よりも高く、「平成30年度介護労働実態調査結果」によると、勤めて1年以内に介護事業所を辞める人は約半数にあたる43・0%となっています。

 私は、介護の仕事を「やりがいや魅力のある仕事」にし、職員が長く働ける環境にするためには、働きやすい職場環境、給与や待遇の改善、キャリアアップの支援、ワークライフバランスの改善、健康管理の支援など、介護事業所における「働き方改革」が喫緊の課題であると思います。さらに、介護職員に対する介護利用者やその家族からのハラスメントへの対策も講じる必要があると考えています。

 平成30年に実施された、UAゼンセン日本介護クラフトユニオンによるアンケート調査によると、介護職員の53・5%が介護利用者やその家族から「不必要に個人的な接触を図られた」、52・6%が「性的冗談を繰り返したり、しつこく言われた」61・4%が「攻撃的態度で大声を出された」また、52・4%が「○○さんはやってくれた等、他者を引き合いに出して強要された」と回答しました。これらの回答から、セクハラ、パワハラ等、何らかのハラスメントを受けたと回答した人は7割を超えていたことが分かりました。

 埼玉県では、本年度より、介護の現場における従事者の安全を確保するために、介護報酬の対象外である複数人での訪問に係る経費や通話録音装置等の導入経費を補助することで支援をするとともに、暴力やハラスメントに関する専用相談窓口を設置するなど、「介護職員ハラスメント対策推進事業」を立ち上げました。

 6月16日から6月定例県議会が始まりますが、私は県内の介護事業所におけるハラスメント対策として、埼玉県のような通話録音装置等の導入や、介護職員のための相談窓口の設置を県に提言しようと考えています。