介護保険制度は、23年前の平成12年に施行され、その3年後の平成15年に介護報酬の改定がありました。臨時の改正以外は概ね3年ごとの見直しがなされています。そして来年、令和6年度は、その改定が行われる予定です。この改定は、厚生労働省の専門部会の方針に基づいたものとなることでしょう。
介護サービスにかかる費用は年々増加し、今年度の総額は当初予算ベースで約13兆8千億円です。しかし、2年後の令和7年度には約15兆円に、また団塊ジュニアの世代が65歳以上になる令和22(2040)年度には約26兆円に増加すると推計されています。
介護保険料は、現役世代である40歳から64歳までの人々と、65歳以上の高齢者が支払う保険料の2種類あります。介護保険制度を支えている現役世代は減少傾向にあり、このままでは介護保険制度を維持するための財源を確保できなくなる可能性が出てきました。
そのため、厚生労働省の専門部会では現在、65歳以上の高齢者が負担する介護保険料について、一定以上の所得がある高齢者は負担額を引き上げ、一方で低所得の高齢者については負担額を引き下げる方向で検討しています。具体的には、どのくらいの収入の人を対象にするか、どの程度の負担額を引き上げるか等について検討しています。
現行の制度では、介護サービスを利用する際の自己負担割合は原則1割で、所得に応じて段階的に2割または3割と定められています。しかし、厚生労働省の専門部会では、介護を必要とする人が年々増加し、それに伴う介護サービスの費用も増加しているため、制度を持続可能なものとするためには、2割または3割を負担する対象者を拡大したいとしています。 私は介護保険制度存続のために、一定以上の所得がある高齢者は負担額を引き上げることは避けられないと考えますが、予算の再編成などで財源を確保することも検討すべきだと思います。
また、介護職員の不足は深刻な問題です。人材の確保と定着のため、待遇改善や労働環境の整備、職員の育成を促す施策も重要です。千葉県も、総合的な指針として、平成26年に「千葉県福祉人材確保・定着推進方針」を策定し様々な取組を実施してきましたが、人材不足は依然として深刻な状況にあることから、令和元年度〜5年度の5ヵ年を期間とする新たな「千葉県福祉人材確保・定着方針」を策定しています。
社会全体で高齢者の尊厳と幸せな生活を支えるためには、介護保険制度に限らず、健康増進や予防医療の普及、地域包括ケアシステムの強化、ロボット技術やICT(情報通信技術)の活用による介護支援や遠隔医療の導入など、高齢者福祉全体の改善にも取り組む必要があります。私は県に対し、介護人材の確保・定着はもちろんのこと、高齢者の健康管理支援や介護現場へのデジタル技術導入など、様々な提言をする所存です。