児童相談所の処遇改善

 船橋市は、令和8年4月にJR南船橋駅前に中核市として独自に児童相談所を開設する予定です。開設にあたって市は、児童福祉司・児童心理司・児童指導員・スーパーバイザー(教育訓練指導担当児童福祉司、約10年程度の経験が必要)や所長などの実務経験が豊富な職員の派遣を県に要請しています。

 ところが県も、県が所管する児童相談所において、専門的人材の確保・育成がままならない状況にあり、船橋市の要望に沿って、実務経験が豊富な職員を、市が必要としている規模で、派遣できるのか危ぶまれています。

 さて、県は毎年増加する児童虐待等に対応するため、令和2年度から令和11年度(5年ごとに見直し)を計画期間とする「千葉県子どもを虐待から守る基本計画 」策定し、令和4年度までに児童相談所の職員を260名程度増員するとしていました。しかしながら、現在、増員は計画通りに進んでいません。

 その状況は、今年1月末までに県の児童相談所の専門職の採用内定を辞退したのは計28人でした。内訳は、児童福祉司(定員55人)で6人が内定を辞退し、採用予定者はわずか8人。一時保護の児童・生徒らへの全般的な指導を担う児童指導員(定員73人)は8人が辞退し、採用予定者は21人。子どもの心理ケアを担当する心理職(定員51人)は9人が辞退し、採用予定者は26人。保育士(定員20人)は5人が辞退し、採用予定者は10人でした。

 平成31(2019)年、県内の野田市において、10歳の女児が父親の虐待により死亡するという痛ましい事件が発生し、このような事件を二度と起こさないという目的で「児童虐待死亡事例検証報告書」が作成されました。この検証報告の第5次答申(令和元年)の提言には「児童福祉司をはじめとする職員が過重な負担を強いられ、丁寧な対応が困難な現状があることを踏まえ、児相の人員体制を抜本的に強化すること」とされています。

 この「職員が過重な負担を強いられている」ことについてですが、令和2年度、県内の児童相談所の児童福祉司、心理職の10・3%が、精神疾患による1カ月以上の長期療養を取得しています。その長期療養の取得率は、県職員の平均2・7%を大幅に上回り、市川児童相談所の職員の長期療養の取得率に至っては、県職員の平均の6倍以上の16・7%で、県内の児童相談所の中で最も高い取得率です。令和元(2020)年、市川児童相談所の一時保護所は、定員20名に対し最大60名の子どもを抱えていました。近年、児童虐待や家庭内の問題の増加により、相談件数や業務量が年々増加し、過重な負担や心理的な負担も増加しています。

 児童相談所の職員の健康を守るために処遇改善は急務です。処遇改善なくして職員の増員は望めません。