共生社会の実現を目指して

 近年、「障害者総合支援法」「障害者差別解消法」「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」等が制定され、障害者を取り巻く法整備は進みました。
しかし「通常学級に通っている軽度発達障害の子どもが、同級生に障害のことでからかわれ、我慢できず同級生に暴力を振るい、そのことで学校の処分を受けることになってしまった。」「人工肛門を着けているので、その処理のため人よりもトイレにいる時間が長く、行く回数も多くなってしまう。そのことを上司や同僚が嫌味を言う。」「知り合いの知的障害の若者が、能力がないと思われているのか、職場で長年ずっと同じ単純作業をさせられていて、他の作業を手伝おうとすると怒られるそうだ。」など、私のもとには、このような相談が多く寄せられています。法整備は進みましたが、障害や疾病に対する理解が進んでおらず、誤解、偏見、誹謗、中傷、差別といったものに、悲しい思いをしなければならない人たちがたくさんいます。障害者や疾病を持つ人たちに悲しい思いをさせないためには、障害や疾病に対する、いわれのない誤解や偏見を解かねばなりません。そして、そのためには医学的見地に基づく正しい知識を社会で共有する必要があります。
文部科学省は「『共生社会』とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である。このような社会を目指すことは、我が国において最も積極的に取り組むべき重要な課題である。」とし、また「学校教育は、障害のある幼児児童生徒の自立と社会参加を目指した取組を含め、『共生社会』の形成に向けて、重要な役割を果たすことが求められている。」としています。
人と人とが良好な関係を築くには、お互いに相手のことをよく知り、相手の個性と人格を尊重し合うことです。いかに法整備が進んでも、心の中にある壁を取り除かない限り、共生社会は実現できません。
千葉県でも、文部科学省の「共生社会」実現の方針に沿って、特別支援学校と通常学級との交流及び共同学習などを通して、相互理解を進める試みをしています。この試みはもちろん、より広く進めていくべきですが、併せて、障害や疾病への正しい知識を身につけさせることにより、誤解、偏見、誹謗、中傷、差別といったものをなくすことを目的とした「障害理解教育」も教育の場や職場などで広く行うべきだと私は考えています。
そして、この「障害理解教育」の中で視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由などの障害と併せて、外見は健常者と変わりなく見えるため、理解を得にくく社会的に不当な扱いを受けることが多い「内部障害」や難病などについて、その理解が進む教育というものを県政の場で提言していく所存です。

平成29年1月29日     野田たけひこ