温暖な気候と豊かな大地に恵まれた千葉県は、全国有数の農業県であり、平成24年の農業産出額は4153億円と全国第3位となっています。また、大根・枝豆・梨など全国第1位の品目も多数あり、米・花き・畜産についても全国上位に位置しています。かつて千葉県は北海道に次ぐ全国第2位の農業産出額を誇っていましたが、平成17年に茨城県に抜かれて以来、2位に返り咲くことはなく、農業産出額も減少傾向にあります。効果的な施策を展開しなければ、千葉県の農業は衰退します。
平成22年の農林水産省の資料によると、千葉県の農業就業者の平均年齢は64.8歳で、農業後継者比率は53.5%(全国37位)です。そして、千葉県の農業就業者の平均年齢は毎年上がり続け、農業後継者比率は毎年下がり続けるという、深刻な高齢化と後継者不在の問題に直面しています。問題の解決策のひとつとして、新たに農業を職業として希望する人たちを、県内外をと問わず、募集し、支援することですが(就農支援)、国、県をはじめ千葉市、市原市、柏市(船橋市同様に中核市)、我孫子市等の基礎自治体が独自に就農支援策を展開しているものの、(残念ながら、船橋市には農業後継者対策事業はありますが、就農支援事業はありません)県内の基礎自治体における、危機意識、制度格差等にバラツキ感があります。やはり県が主導的役割を発揮し、就農支援策の統一基準を設け、県内の基礎自治体に就農支援策の策定を働きかけるべきでしょう。
また云うまでもなく、農業は天候に左右されます。地球温暖化により愛媛県、和歌山県等、温州みかんの産地では不良品の多発が顕著になり、今後も温州みかんを生産するのかという切実な議論がなされています。千葉県の特産品である梨も、暖冬の影響で低温順化が十分進まず、霜等の害を受けやすくなる、梨の眠り病(成熟過程で腐ってしまう梨の病)、生育期の高温による結実不良等の被害が深刻化しています。しかし地球温暖化に伴う農業への悪影響を防ぐだけの農政ではなく、地球温暖化を積極的に利用する農政もあります。
例えば、宮崎県のマンゴーは地球温暖化を見据えた特産品であり、ブランド化も成功しています。愛媛県でも温州みかんの不良品多発を受け、イタリア・シシリー島を産地とするブラット・オレンジの栽培に取り組んでいます。千葉県では農産振興計画等の策定、農林総合研究センターでの梨等の研究はしていますが、地球温暖化を積極的に利用する農政という視点はありません。千葉県にも、地球温暖化を積極的に利用し、特産品を開発し、市場に売り込む、攻めの農政が必要です。
農業就業者の高齢化と後継者不在、地球温暖化、TPP交渉のゆくえ、食糧危機の可能性等、農業を取り巻く環境は大変厳しいですが、日本人の勤勉さ等の美徳は、農業に従事することにより育まれてきました。「農」は国家の根本に係るものです。
野田たけひこ