古代エジプトのピラミッドやスフィンクス等は、現場監督が多くの労働者たちを鞭打ちながら使うような過酷な労働の下に建設されたものというイメージがありましたが、事実はどうも違ったようです。それは、近年解読された古代エジプトの「労働者の出勤簿」から分かりました。その出勤簿には就業時間も決められていて、今で言うところのタイムカードのようなもので、労働時間が管理されていました。休暇も「誕生日だから」「二日酔いでつらい」等の理由でも取ることができました。労働の報酬として、一日パン3個にビール2壷。また、それとは別に一日の仕事の終わりにビールも振る舞われ、衣・食・住すべてが支給されていたそうです。ピラミッドやスフィンクス等はどのような目的で作られたのかについては、「農閑期の農民への生活保障」「ナイル川の洪水で畑を失った農民への失業対策」等、王家の「富の再配分」を目的とした「公共事業」でもあったという説があります。
さて、日本のGDP(国内総生産)に占める「個人消費」の割合は約6割です。当然ながら国民の消費活動が活発ならば、景気がいい状態であるといえ、GDPの総額を増やすことにつながります。消費活動を活発にするには、『企業収益を伸ばし賃金を上げることにより、個人が消費に回せるお金を増やす。』その他にも『景気対策、雇用創出などのために「公共事業」を行い、収められた税金、「富の再配分」により、個人が消費に回せるお金を増やす。』方法があります。
また、1929年に始まった世界大恐慌の際、アメリカのルーズベルト大統領が打ち出したニューディール政策で、不況・雇用対策としてTVA(テネシー川流域開発公社)を設立して、ダムなどを作ったことが有名です。公共事業は何も「大規模工事」ばかりではありません。もちろん防災のためのインフラ整備などは必要です。バブル崩壊後自民党政権の下、国・地方は公共事業として多くの大規模工事を発注しました。残念ながら「富の再配分」効果、景気対策効果は、さほどなかったという現実があります。
平成22年版・厚生労働白書には『社会保障と経済成長はトレードオフの関係ではない。社会保障の充実は格差を縮小させ、雇用を生み、安心感を高める。「いつまでもいきいきと働きたい」「地域で暮らし続けたい」といった国民の思いに応え、労働市場や地域社会などへの参加を促す「参加型社会保障(ポジティブ・ウェルフェア)」は経済成長の基盤である』という一文があります。社会保障の充実は少子高齢社会を見据えたものだけでなく、景気対策、経済政策でもあるとご理解下さい。皆様にお配りしている私の「県政改革」で社会保障等に係る提言が多いことからか、ある方から「福祉バラマキではないか」とのご意見を頂きました。それについて私の見解を述べさせていただきました。
平成29年2月12日 野田たけひこ
参加型社会保障について