埼玉県の「児童虐待禁止条例改正案」

 「小学校3年生までの児童を現に養護するものは当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置をしてはならない」とする、埼玉県の自民党県議団が提出した、子どもの放置をめぐる虐待禁止条例の一部改正案は、今月6日に開かれた埼玉県議会の福祉保健医療委員会において、自民・公明等の賛成多数で可決され、13日の本会議で採決されることとなっていました。

 この改正案の内容についてですが、小学3年生以下の子どもを持つ親に対して、

 ⦿子どもたちだけの自宅での留守番

 ⦿未成年の高校生に小学生などのきょうだいを預けて買い物に出かける行為

 ⦿子どもだけ家に残してゴミ捨てに行く行為

 ⦿子どもたちだけで公園などで遊ぶこと

 ⦿子どもたちだけでの登下校

 ⦿子どもにおつかいさせる行為

これらの行為を禁止し、「県民は、虐待を受けた児童等を発見した場合は、速やかに通告または通報しなければならない」とするものです。

 しかしながら、この改正案は、子育て世帯の実情から現実離れしていると批判が殺到したことから、今月13日の埼玉県議会において、提出から1週間足らずで、撤回されることとなりました。

 確かに、児童相談所が虐待相談を受けて対応した件数は10年以上増え続けており、昨年度は過去最多の約21万9千件と、12年前の平成23年度の3倍以上に達しています。そして毎年、幼児をパチンコ店等の駐車場で車内に放置し、それがために幼児が熱中症によって亡くなるという事件が頻発しています。

 しかしながら、虐待の増加には、家庭の孤立や非正規雇用の増加に伴う貧困など、個人の努力では解決が難しい社会的な要因が大きいことから、子育て支援の充実や子どもの居場所の受け皿づくりも必要です。

 共働き世帯は、平成12(2000)年頃には世帯の半数である50%を超え、令和3(2021)年時点では、68・8%となっています。さらに、令和4(2022)年の児童(18歳未満)の子どもがいる世帯において、母親が働いている割合は、75・7%と非常に高い割合です。

 そのような共働き家庭や一人親家庭等の小学校に就学している児童に対しては、放課後や長期休業期間の適切な遊び場や生活の場を提供する「放課後児童クラブ」(船橋市は放課後ルーム)は不可欠です。

 ちなみに令和4年5月1日現在、全国の放課後児童クラブの待機児童数ワースト1位は東京都 3,465人、2位は埼玉県 1,554人、3位は千葉県 1,179人でした。そして待機児童数は、東京都、埼玉県、千葉県の3都県が全体の約4割を占めています。

 待機児童問題を解決するためには、地域の協力を強化し、学校と地域団体、地方自治体が連携して受け皿の確保をする取り組みを進めることが重要です。