出生数の減少によりベビー用紙おむつ市場が厳しい状況にある中で、65歳以上の人口が増え続けており、大人用紙おむつの需要が急増しています。環境省の調査によると、2030年には、紙おむつ使用人口が、子ども約288万人、大人が約468万人と推計されています。大手製紙会社では、今年の9月をもって国内の子ども用紙おむつ事業から撤退し、大人用紙おむつ事業を強化するそうです。
また、加齢だけではなく、前立腺がん、膀胱がんの影響により、尿漏れパッド、紙おむつを日常的に使用する方が増えており、令和2年の日本人男性のがん罹患者数の順位では、前立腺がんが第1位となっています。前立腺とは膀胱の下にあり、尿道を取り囲んでいる男性のみにある臓器です。膀胱がんの罹患率も、厚労省の資料によりますと、男女とも60歳代から増加し、男性の罹患率は女性の約4倍とのことです。
しかしながら、男子トイレにはサニタリーボックス(汚物入れ)が設置されていないため、尿漏れパッド、紙おむつを日常的に使用する男性は、それを捨てる場所がほぼありませんでした。尿漏れパッド、紙おむつを日常的に使用する方は、それを頻繁に交換する必要があります。使用済みの大人用紙おむつはドッジボール(直径約20㎝)ほどの大きさに膨らむため、帰宅するまで、これを何個も持ち歩くことになります。
排泄トラブルを抱える方の外出時の悩みを訊くと、「常にトイレを探す」「せっかく楽しいところに行っても楽しめない」「外出する意欲がわかない」と回答しています。
そのようなことから、現在、公共施設等の男子トイレにサニタリーボックスを設置する動きが広まっています。長崎市は市の庁舎や公民館、図書館、観光施設等の50カ所に設置済で、一覧表を市のウェブサイトに載せ、利用者にPRしています。また佐賀市は主な公共施設の6割にあたる60カ所に設置済とのことです。そして民間企業でもサニタリーボックスを設置する動きが出ているそうです。また、デパートやショッピングモール、駅や空港、高速道路のSAなどへの設置を望む声が多く寄せられているようです。大人用紙おむつの需要の急増に伴い、女子トイレのサニタリーボックスも主に生理用品のためではなく、尿漏れパッド、紙おむつも捨てられるように大きくすべきです。
そして、2023年1月、厚生労働省は「使用済みおむつを保育園にて回収・処理することを推奨」する声明を発表しました。商業施設やレジャー施設においても、使用済みのおむつを持ち歩くことなく子どもと楽しむためには、男女問わずサニタリーボックスの設置が必要ではないでしょうか。それと同時に、男性トイレにも子どものおむつ交換台のニーズが高まっているそうです。
プライバシーと尊厳の保持、多様性を認め合う観点からも、男子トイレにサニタリーボックスやおむつ交換台を設置することは、現代の多様なニーズに対応するための重要な一歩となるはずです。