平成28(2016)年に故・安倍元総理の下「女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、 障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる、いわば全員参加型の社会」ニッポン一億総活躍プランが閣議決定されました。
誰もが活躍できる社会をつくっていく。この一億総活躍社会に係る、崇高な理想を否定する人はいないでしょう。その政策には、少子高齢化が進行する中、いかに日本経済を進歩させるかという現実的な側面も併せ持っています。しかしながら社会は、多様な人々を温かく迎え入れるものとはなっていません。
一億総活躍社会を提唱した故・安倍元総理が高く評価し、昨年8月に岸田首相が任命した総務大臣政務官は、「(性暴力被害者に対して)女としての落ち度があった・女性はいくらでも嘘をつける」「LGBTは生産性がない」等々、これまで、数々の問題発言を繰り返してきました。差別や偏見を助長し、国民間の溝を広げようとする人物を評価し、政府の中枢に任用する政権が、多様な人々を温かく迎え入れる社会づくりに力を入れているとは思えません。
少子化の進行は、若者の働き手が長期的に減少することですから、経済規模の縮小を意味します。将来の日本経済を考えると、働き手の数を増やさなければなりません。そのためには、誰もが働き、社会進出しやすい法整備が必要となりました。その一環として、女性の社会進出の後押しのために「女性活躍推進法」や、70歳まで働くことができるようにと「高年齢者雇用安定法」等の法改正がなされました。
加速している少子高齢化に加え、新型コロナウイルス感染症は収束の兆しも見えません。また、ロシアによるウクライナ軍事侵攻の影響を受け、世界的に原油価格が高騰しました。それにより燃料価格が上昇し、特に運輸、食品・飲料、住宅・光熱費など、国民の生活に関わる分野で激しい物価上昇に悩まされています。そして、日銀の円安政策も輸入コストの商品への価格転化となり、価格高騰に輪をかけることとなっています。
そのような中、暮らしを成り立たせようと、多くの人々が働くために社会に進出しています。国はその現実を見据え、多様性に係る差別や偏見をなくさなければなりません。多様な人々の社会進出を促すのであれば、多様な人々を温かく迎え入れる受け皿となる社会の環境整備にも力を入れるべきではないでしょうか。
世界では価値観の多様化が進み、個を尊重する時代へと変化しつつあります。私は、人がそれぞれに持つ人種、国籍、宗教、年齢、性別、障がい、性的指向、学歴、価値観等の様々な違いを互いに尊重し合い、共に支え合う「共生社会の実現」に力を入れることが、多様な人々の社会進出の大前提だと考えます。
今年一年、「県政改革」をご高覧頂きましてありがとうございました。来年もご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。