多様性の尊重に係る議論について

 かつて「介護」は、祖父母、両親、大勢の兄弟や姉妹が、ひとつ屋根の下に住むという家庭形態の中で語られ、「男は仕事。女は専業主婦」という「伝統的な家族観・価値観」の下「妻」や、今では、ほとんど聞くことがなくなった「花嫁修行中」、「家事手伝い」などの「娘」の手助け等、もっぱら女性の手によって成り立っていました。また「親の恩に報いるのは、子の務め」という考え方の下、「介護」を他人に委ねるのは、憚られるという空気もあったのではないでしょうか。

 しかしながら、産業構造の変化等で日本の都市は若い働き手を必要としたことから、若者は地方を出て都市で働き、「人口の流動化」「核家族化」が進行しました。そして家族の介護力は低下し、「伝統的な家族観・価値観」に基づく「介護」は成り立たなくなりました。

 人口構造が高齢化し、生活環境が大きく変化するなか導入が検討されたのが介護保険制度です。そして、この制度の導入にあたっては、やはり「高齢者の介護は、親族間の扶養の問題であり、介護者が不在、もしくは低所得等の特段の問題がない限り、行政等の公的サービスが介入すべき問題ではない」というような「伝統的な家族観・価値観」に基づく反対意見も出されました。

 そのような議論を経て、介護保険制度は、今から22年前の平成12(2000)年、年に創設され、現在では、約674万人の方が要介護(要支援)の認定を受け、介護を必要とする高齢者を支える制度として定着しています。

 今年2月1日の衆議院予算委員会で岸田首相は、夫婦別姓や同性婚について「制度を改正すると、家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と懸念を示しました。「介護」が変わっていったように、今は夫婦の関係や親子の関係も、よりフラットな関係になっています。このように「伝統的な家族観・価値観」というものは、その時代の変化とともに変わっていくものなのではないでしょうか。

 私は千葉県において、多様性の尊重を推進する条例の制定を目指していますが、「伝統的な家族観・価値観」等により、多様性の尊重に対し慎重な人たちの意見も、じゅうぶんに踏まえ、議論を深めていく必要があると考えています。

 法律や条例ができれば、それでよいというのではなく、多様性に係る差別や偏見をなくすことがより重要なことです。
物事を決定するにあたっては拙速を避け、多様性に係る様々な人たちの意見を聞き、一層の理解促進を図ることが必要であり、それがまさに多様性の尊重に係る議論に相応しいと考えています。

 WBCは、チームのために、仲間のために、日本のためにがんばった侍ジャパンが優勝を果たし、大きな勇気と感動を与えてくれました。3月31日から統一地方選挙の火蓋が切られます。市政・県政・国政のチームが一丸となり船橋市のために、千葉県のために、日本のために戦いに臨む決意です。引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。