多様性への理解促進の進展

 2013年、ニュージーランドで同性婚を認める法案の最終審議の際に、モーリス・ウィリアムソン議員が行った、通称「ビッグ・ゲイ・レインボー・スピーチ」の要約をご紹介します。「今、私たちがやろうとしていることは『愛し合う二人の結婚を認めよう』ただそれだけです。この法案に反対する人に私は約束しましょう。明日も太陽は昇る。明日も世界はいつものように回り続けます。だから、大騒ぎするのはやめましょう。この法案は関係がある人には素晴らしいものですが、関係ない人にはただ、今までどおりの人生が続くだけです」モーリス・ウィリアムソン議員が約束した通り、法案成立後も今までどおり国民の生活は回り続けています。

 私は、昨年の2月と9月の定例県議会の一般質問で、人種、国籍、宗教、年齢、性別、障がい、性的指向、学歴、価値観等、人がそれぞれに持っている、多様性を尊重すること、すなわちダイバーシティの推進を県に提言していますが、知事からは賛同の意は示されたものの、残念ながら、条例化までの踏み込んだ答弁ではありませんでした。しかし、12月定例県議会で、熊谷知事より「男女共同参画にとどまらず、障がい者、性的指向・性自認、国籍などを包含した多様性の尊重を推進していくため、条例の制定も含め、本件に相応しい方策のあり方について検討を進めていきたい」という答弁を引き出しました。

 また、岸田首相も今年の2月1日の衆院予算委員会では、同性婚や夫婦別姓について「制度を改正すると、家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と述べ、当初は法整備に慎重な姿勢を示していました。しかし、2月17日には、LGBT等の性的マイノリティーの人たちを支援する3つの団体の代表者らと面会し、1月に更迭した総理大臣秘書官の差別的な発言を陳謝し、多様性が尊重される社会の実現に向けて、努力していく考えを伝えるに至り、事態は大きく変わりました。

 この流れを捉え2月20日、熊谷知事が中心となり、「日本創生のための将来世代応援知事同盟」の全国23県の知事が国に対し、「多様性への理解促進と誰もが安心して暮らし、活躍できる社会づくりを求める緊急共同声明」を共同で発表しました。

 熊谷知事は記者会見で、「この声明によって、それぞれの都道府県の取り組みはもとより、日本全体がLGBTの方々も含めた多様性を尊重する社会となり、活力が満ちた日本になることを、地方から頑張っていきたい」「千葉県としては、しっかりと議会との議論を重ねたうえで、多様な方々すべてを包摂するような新たな条例の制定を図るとともに、当事者や関係者の意見を聞きながら、一層の理解促進と、それぞれの分野における具体的な施策を推進しようと考えている」とコメントしました。

 機運が高まり、多様性への理解促進の条例や法律が出来ることはよいことです。しかしながら、出来ればそれでよいというものではなく、多様性に係る差別や偏見をなくすことがより重要なことです。私は、条例案や法案の成立を急ぐのではなく、まさに家族観や価値観の違いも尊重し、議論を尽くすことが重要だと考えています。