文科省「学校基本調査」によりますと、昨年度の大学在学者数は294万5,599人で過去最多を記録し、その内、女子在学者率も44・6%と、これも過去最多を更新しました。ちなみに、高校卒業後の大学への進学率は61・6%(短大・専門学校を含めると73・2%)です。
そして、多くの学生が通う私立文系学部の初年度納付金は156万6,300円程度、4年間の学費総額は407万9,000円程度(私立の医学部は3,300万円程度)です。また、地方出身の若者が首都圏などの大学に通うには、下宿する必要がありますので、そのための資金も必要となります。
労働者福祉中央協議会の調査によると、大学生が利用する奨学金の平均金額は、約324万円で、これに利息分を加えると400万円近くを返済することになるそうです。卒業したと同時に借金を抱えることは精神的にも辛いことです。
経済的な問題で大学進学が叶わなかった場合、それは所得格差につながります。残念ながら、高卒者の月給は大学・大学院卒者の6割程度で、生涯年収でみると男性の場合は約8千万円、女性の場合は約1億円もの差へ広がるといわれています。
また、日本財団の調査では、大卒者の増加や就業形態の改善によって生涯所得が増加するほか、所得増に伴い個人による税・社会保障費用の支払いが増えることで、国の財政負担がその分軽減されるそうです。
先週、皆様にお配りした「県政改革 教育は未来への投資」に、OECD加盟の34カ国中、17カ国では、大学の教育費を無償化していると書かせて頂きましたが、それらの国の家庭では、日本の家庭のように、多額のお金を教育費として準備することなく、消費に回しています。お金は一カ所に滞(とどこお)ることなく、様々な所を流通することによって、市場が活性化することを考えますと、大学の教育費の無償化は、現役世代の負担軽減と経済の活性化にもつながります。
教育費を捻出するために消費を差し控えることや、老後の介護や医療費捻出にために貯蓄しなければならないのではなく、これらのベーシックサービス(基礎的な社会サービス)は、「自助努力」「受益者負担」「自己責任」だけではなく、国民全体の問題として捉え、議論を深めていくべきではないでしょうか。
将来を担う子どもたちの学びは、教育や科学・経済の発展や技術の進歩につながる「未来への投資」です。奨学金制度の拡充や家庭の収入に応じた奨学金制度の導入、民間企業や個人からの寄付の支援を活用し、持続可能で包括的な無償化政策を実現すべきです。