岸田首相が掲げる「次元の異なる少子化対策」は、「若い世代の所得を増やす」「社会全体の構造・意識を変える」「全ての子育て世帯を切れ目なく支援する」の3点を基本理念としています。具体策として、「児童手当の対象拡大や男性の育児休業取得の促進」等を挙げています。もちろん異を唱えるものではありませんが、国は「子どもが生まれたら」の支援、「子育て支援」ばかりでなく、安心して妊娠・出産できる体制の確保にも目を向けるべきではないでしょうか。
晩婚化が進行し、1980年には第1子出生時の母親の平均年齢は26・4歳でしたが、2021年には30・9歳と晩産化も進行しています。体の仕組みとしては、35歳をすぎると母体・胎児へのリスクが急激に上がり、高血圧、糖尿病、子宮筋腫などの妊娠合併症の発症率が高くなります。特に高リスクの妊婦には必要なケアを提供し、頻繁に産院に通う必要のある場合にも対応できるよう配慮なければなりません。
母子保健法13条では「市町村は妊産婦に対して健康診査を行い又は健康診査を受けることを奨励しなければならない」とされており、「厚生労働大臣は妊婦に対する健康診査について望ましい基準を定める」とも規定されています。そして現在、全国のほとんどの市町村は、独自に妊婦健診の内容を決定し、国の基準である14回の妊婦健診受診票を交付し、妊婦健診の公費負担をしています。
厚生労働省は今年3月、「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について」を公表しました。その調査から、予定日(40週)以降の14回を超えた分の妊婦健診については全国の9割近く(88・7%)の市町村が公費負担をしていないことが分かりました。
また、船橋市を含む県内54市町村の妊婦健診も、千葉県市長会、千葉県町村会が千葉県医師会と協議し、回数や受診票ごとの助成上限額を県内統一の基準を設け、14回の助成とし、それを超えた妊婦健診は自己負担としています。
船橋市の保健師による「4か月児健康相談問診票」の集計によると、妊娠周期が40週を超えて出産を迎える妊婦が全体の3割程度であることが確認されています。これは、切迫早産だと診断され、頻繁に産院に通わなければならず、14回分の妊婦健診受診票を早々に使い切ってしまうというようなケースなどです。船橋市の地域保健推進協議会には、「安心安全な妊娠出産を迎えるためには、追加助成する必要がある」との意見が多く寄せられています。
私は、高リスクの妊婦や経済的に困難な家庭に対して適切な支援を行い、安心して妊娠・出産できる体制を確保するために、妊婦健診の回数の引き上げと、それに係る財政措置の拡充を県議会で提言していきます。