子どもの貧困について

タイのCMには感涙ものの作品がたくさんあります。好きな作品の一つに「病気の母のために薬を万引し、薬局の店主に激しく怒られ、うなだれている少年に、となりの食堂の店主が薬代を代わりに支払ってやり、売り物のスープも持たせる」その交流の30年後のお話です。これから先のお話をお伝えし、皆様と感動を分かち合いたいのですが、これ以上、筋を明かしてしまいますと、いわゆる「ネタばれ」になってしまいますので、この先についてはネット等でお調べ頂き、この動画をぜひご覧下さい。

さて、私たち現役世代は高齢世代を支え、そして私たちが高齢世代となった時には、次世代の人たちが私たちを支えてくれます。この一連の流れは洋の東西を問わず、太古の昔から続けられてきました。また次世代に余裕がなければ、私たち現役世代を支えるのにあたり、苦労するでしょう。次世代の生活の充実なくして、現役世代の老後の充実は成り立ちません。つまり次世代への子育て支援策、教育環境の整備等は、現役世代の医療、介護とも密接に結びついています。ですから子育て支援策、教育環境の整備等は政治の重要なテーマであり続けます。

貧困線という言葉があります。これは「生活に必要なものを購入することができる最低限の収入を表す指標、境界線」で、この貧困線以下の収入では、一家の生活を支えることができず、趣味や嗜好品に収入を振り分ける余裕もありません。日本ではこの貧困線を年収122万円以下としていますが、現在、6人に1人の子どもが貧困線以下の家庭環境にあるといわれています。そして高校を卒業して2人に1人が大学に進学する時代に、貧困線以下の家庭の子どもの大学進学率は、平均を下回り、3人に1人以下です。また家庭の所得が子どもの進学に大きな影響を及ぼすという現実は、東大に進学する子どもの家庭の平均年収が1千万円以上であることとも符合します。

日本は天然資源がほとんど取れません。また国土の7割が山で大規模農業に適しておらず、農産物の輸出で豊かになるのも難しいでしょう。日本が今後も豊かであり続けるには、日本人の教育水準の高さというものを、維持できるかどうかにかかっています。ですから子どもが貧困によって、満足な教育が受けられない、進学をあきらめざるを得ない等の教育上のハンディキャップを埋めていく。それが子どもには、自分より幸せな人生を歩んでほしいという親心に添うことであり、現役世代の義務でもあります。

以前、千葉県の医師不足に鑑み、医師の養成のために財政支援をする、医学修学金貸与制度の拡充について書いたことがありましたが、その制度のみならず、子育て支援策、教育環境の整備等の充実は喫緊の課題です。

野田たけひこ