子供の貧困 -支援制度の周知についてー

 2月18日 毎日新聞の朝刊の一面は「少子化で子どもの数が減少しているにもかかわらず、生活保護費以下の収入で暮らす子育て世帯が過去20年で倍増し、39都道府県で子育て世帯の10%以上が貧困状態にあり、子どもの貧困が全国的に深刻化しているという記事でした。本県の貧困率は10.4%で全国平均の13.8%は下回るものの、20年前の調査と比較して全国平均を上回る貧困率の上昇がみられたとありました。

子どもの貧困に対する国の対応は鈍く、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が施行されたのは平成26年1月のことです。法には「政府は子どもの貧困対策を総合的に推進するため、子どもの貧困対策に関する大綱を定めなければならない」「都道府県は、大綱を勘案して、子どもの貧困対策についての計画を定めるよう努めるものとする」と規定されています。それを受けて平成26年8月、「子どもの貧困対策に関する大綱」が閣議決定され、千葉県も昨年の12月、「千葉県こども貧困対策推進計画」を策定しました。

この計画の中に「子どもの貧困に係る本県の現状」を実態調査したものがあり、「教育の支援の利用状況」「生活の支援の利用状況」「保護者に対する就労支援の利用状況」「経済的支援の利用状況」等、それぞれの項目について、生活保護を受けている17歳以下の子どもがいる保護者を対象にアンケートを実施しました。その結果は、いずれの項目においても「支援制度を利用したいができない」との回答が多く、その理由は「窓口や手続きが分かりにくかった」というものでした。この結果から考えると、ご自身やお子さんが各種支援制度の対象となるのを知らず、支援制度を利用していない方が、多数いる可能性があると思われます。欧米諸国に比べ不十分ですが、国、県、市町村は貧困家庭への各種支援制度を用意しています。支援制度の内容や生活困窮者自立相談支援窓口等の一層の周知と、相談窓口における適切な情報提供を図ることが課題です。

日本財団が日本の15歳の子ども120万人のうち、ひとり親家庭、生活保護家庭、児童養護施設の計約18万人を対象にした調査・研究で、この18万人の経済格差、教育格差の改善をしないと、生涯所得(64歳までに得る所得の合計)は低いと推定され、改善をした場合には、正社員が増加、無職が減少し、生涯所得も高くなると推定されます。したがって、子どもの貧困を放置して、経済格差、教育格差の改善をしなかった場合、国の経済損失は約2.9兆円に及び、財政負担は約1.1兆円増えると試算しました。また調査対象を15歳に限らない場合、国の損失額はその何倍にも膨れ上がるそうです。これについて日本財団は「子供の貧困対策事業は慈善事業でなく経済対策として捉え、官民で取り組むべきものである。この試算結果が対策の後押しになれば」とコメントしています。