孤独死・孤立死について

 孤独死・孤立死に明確な定義はありませんが、孤独死は、「突然の病気などにより、主に一人暮らしの人が自宅などで誰にも看取られずに亡くなってしまうこと。」孤立死は、「社会的孤立により、自宅などで亡くなったあと誰にも発見されないままになること(特に事件性はない)。」とされています。どちらも痛ましいことには変わりありませんが、孤立死は孤独死よりもさらに深刻なものといえるのではないでしょうか。

 政府は「孤独死・孤立死」の実態把握を進めており、警察庁は今年上半期(1~6月)の自宅で死亡しているのが見つかった一人暮らしの人を初めて集計して発表しました。

 それによりますと、全国で計3万7227人(暫定値)に上り、このうち約8割の2万8330人が65歳以上の高齢者で、年齢層では85歳以上が最多の7498人、次いで75~79歳が5920人、70~74歳が5635人という結果でした。一方、65歳未満も8826人に上り、中高年だけでなく、30歳代が512人、20歳代が431人、15~19歳の若者も42人いたそうです。そして、死亡推定から遺体発見までの経過日数は、当日~1日以内が1万4775人で全体の約4割で、1か月以上も3936人と約1割に上り、周囲との交流が乏しい現状が浮き彫りとなっています。

 65歳以上の高齢者の増加に伴い、一人暮らしの高齢者は、2020年の738万人(20・5%)から、2050年には1084万人(27・9%)まで達すると推計されています。

 また、SNSやオンラインコミュニケーションの普及により実際の対面での交流が少なくなり、人間関係の質や深さに影響を与え、特に非正規雇用や低賃金労働で、家庭からの支援が得られない若者は、孤立しやすくなるとされています。

 そして、生涯未婚率が高い水準で推移し、また生涯子どもを産まない女性が増え、産む場合でも1人っ子など、子どもの数が少ないことが予測される中、別居する子ども・きょうだいなども含めて、全く身寄りがなかったり、家族からの支援が見込めない独居高齢者が増加すると予測されています。

 1960年代以降、伝統的な大家族制度から、個々の家庭が独立する核家族へと変わりました。また、デジタル化により生活が便利になり、物理的に地域に出向く必要が少なくなり、地域内での支え合いや結びつきが減少しました。そして核家族化が進んで、65歳以上の高齢者が自分と同じ65歳以上の高齢者を介護している状態の「老老介護」、認知症の人が自分と同じ認知症の人を介護している状態の「認認介護」も増加の傾向にあるそうです。2022年の「老老介護」の割合は63・5%と、深刻な状態にあり、さらに割合が増えていくことが予想されています。

 誰もが尊厳のある幸せな生活の実現に向けて、少子高齢化に歯止めをかけるとともに、地域のつながりを再構築するための取り組みや、コミュニティー活動の支援、地域の魅力を高める施策が重要です。