幸福に働き、幸福に生きる

 日本国憲法第二十七条一項では「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」と規定されています。我が国には古来より、勤勉に働くことを美徳とする価値観が根強く残っています。

 そして、日本国憲法第十三条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とあります。

 しかしながら、過労死や燃え尽き症候群が、我が国の過酷な労働環境を象徴する社会問題となっており、この憲法十三条の規定に反するものではないでしょうか。自らの健康を犠牲にしてまでも、働かなければならないとしたならば、それは幸福の状態にあるとは言えません。

 人は心に余裕がないと不満が溜まってしまい、人に優しくすることはできません。共生社会の実現も困難になってしまいます。人が幸福を実感し、他者を労わるためには「心の余裕」(ゆとり)が必要です。「心の余裕」を得るためには「働き方」を見直す必要があるのではないでしょうか。

 そのような観点から、現在開会中の12月定例県議会の会派の代表質問原稿を担当している私は、「教職員の過酷な労働環境の現状に対してのメンタルヘルス対策と働き方改革の強化」ついて述べさせて頂きました。

 また、会社一筋で懸命に働き、地域での人間関係を築く余裕(ゆとり)がなく、定年退職で会社というタテ社会から抜け、地位や肩書を失い、ヨコ社会のただの個人となり、家族以外とは話す相手がいないと気付いた時、私たちの老後は不幸なものになってしまうのはないでしょうか。さらに、家族や近隣住民との関わりが希薄で、社会から孤立した状態で誰にも看取られることなく亡くなる「孤立死」も増加傾向です。私は、昨年の2月定例県議会の一般質問では、「我が国の孤立、孤独と孤立死の現状」についても述べさせて頂きました。

 昨今、ロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー価格が高騰し、さらに円安による輸入原材料の高騰などによりあらゆる商品やサービスが値上がりしています。今年の値上げは既に3万品目を超え、年内までに昨年より1万品目多い3万5000品目前後が想定され、さらに家計を直撃しています。もちろん物価上昇に見合った賃金の引き上げ、大胆な経済対策は急務ですが、幸福に生きるための基盤は、健康な体と心です。私は、「心の余裕」(ゆとり)が持てるような「働き方改革」も同時に進めなければならないと考えています。

 心に余裕(ゆとり)があると、自身の健康的な生活習慣や精神的なケアが重視されて、ポジティブな感情の増加やコミュニケーションが円滑になるなど、日々の生活がより充実し、幸福感が向上するそうです。これからも、しっかりと「孤立・孤独問題」に直結している「働き方改革」を推進していく所存です。