性犯罪・性暴力被害者支援について

 性犯罪・性暴力は被害者の個人の尊厳が冒されるばかりでなく、被害者が自らを個人として尊重されるべきものと思えなくなってしまう程の、重大で深刻な被害を与えます。被害の性質上、支援を求めることをためらうことで、被害者の多くが泣き寝入りし、事件として顕在化するのは氷山の一角であるとも言われています。性犯罪・性暴力は、被害者が心に大きな傷を負い、その傷を一生引きずることから「魂の殺人」と呼ばれています。
現行の強姦(ごうかん)罪や強制わいせつ罪は、被害者の名誉やプライバシーの保護を理由に、被害者の告訴が立件の条件です。しかし、罪に問うかどうかの判断は被害者に委ねられるので、精神的な負担が重く、見直しを求める声がありました。また強姦罪の法定刑は、現行の「懲役3年以上」では軽いため、引き上げを求める声が被害者から出ていました。
 そのような声を受け、法務大臣の諮問機関である「法制審議会」は9月12日、性犯罪の構成要件などを見直す法改正の要綱を採択し、法務大臣に答申しました。その内容は、『被害者らの告訴がなくても強姦罪や強制わいせつ罪などで容疑者を起訴できる。また法定刑も「懲役5年以上」に引き上げる。さらに、被害者を女性に限っている強姦罪を加害者、被害者ともに男女性別は問わず処罰の対象とする。また、子どもを性犯罪から守るため家庭内での性犯罪も厳罰化し、児童福祉法の適用で軽い罪で済んでいたケースでも強制わいせつ罪などに問えるようにする。』というものです。この答申を受けて法務省は、来年の国会で刑法の改正法案を提出する方針だそうです。この法改正は1907年以来、実に110年ぶりのことだそうです。
今年3月の議会で、県議会・民進党が「性犯罪等被害者を支援するワンストップセンターの設置等を求める意見書案」を提出しました。それを受けて、私が予算委員会でワンストップセンターの設置等を含めた、性犯罪・性暴力被害者への支援の充実について、県の執行部に質疑しました。この意見書案は残念ながら、自民党の反対により、県の委員会、本会議で採択されませんでした。
 しかし、世論や国の動向によるものなのでしょうか。県議会の自民党はともかく、県の執行部が「性犯罪・性暴力被害者支援のワンストップセンター設置」に前向きになってきたことが、現在、開会中の議会における民進党の代表質問で明らかになりました。一歩前進です。性犯罪・性暴力の被害者は、思い出したくないことを、何度も繰り返し質問されたり、心無い発言をされることもあります。被害経験を他人に話すこと、傷を深めるようなことを言われることは、本当に辛いと思います。それを避け、被害者の傷ついた心に寄り添うために、ワンストップセンターは必要不可欠です。

※ワンストップセンター(一カ所で必要な支援を提供する所のこと。主として、性犯罪・性暴力の被害者に対し被害直後からの総合的な支援を行い精神と身体の回復を図り、さらに警察への被害届出促進などを行う所を指す。)

平成28年10月2日       野田たけひこ