性犯罪再犯防止について

 皆さまも報道等でご存じだと思いますが、歴史ある芸能事務所の創設者による性加害問題が60年も経過した今、明らかになりました。性別や年齢を問わず、望まない性的な行為はすべて性暴力です。

 性犯罪の加害者は、性依存症もしくは性嗜好障害という依存症や障がいを抱えているのではないかと言われています。性依存症とは、快楽物質にかかわる脳の機能障害で精神疾患の1つであり、性的な活動に対する強い欲求を感じ、行動をコントロールすることが難しく、自己制御が効かなくなることが特徴で、性嗜好障害は、異常な性的興奮や性的な嗜好を持つことが特徴です。

 治療で回復や制御は可能とされ、海外の調査では人口の3%から10%が性依存症であるとのデータもあります。しかしながら、性依存症に関する調査研究は進んでおらず、アルコールやギャンブル等の依存症対策のように事業化もされていません。また、相談窓口や専門の医療機関も限られており、性依存症からの回復を目指す自助グループもわずかというのが実情です。

 今月5日、こども家庭庁の有識者会議は、子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないことを確認する新たな仕組み「日本版DBS」に係る報告書案を公表しました。

 この報告書案を作成するにあたって、今年7月19日に「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議」を開き、そこで「性犯罪の再犯に関する資料」を配布しています。

 その資料には「小児わいせつ型の性犯罪で有罪確定した者のうち、それ以前に2回以上の性犯罪前科を有している者について見ると、それらの前科も 同じく小児わいせつ型であった者の割合は84・6%あった。この数値は再犯率ではないものの、小児わいせつ型の性犯罪に及んだ者の中に、複数回の刑事処分を受けているにもかかわらず、同じく小児わいせつ型の性犯罪を繰り返す者が一定数存在することが認められる」という記述があります。

 現在、再犯が危惧される性犯罪受刑者は、刑務所内で1回100分の講座を週1、2回、4〜9ヶ月行う「性犯罪者処遇プログラム」を受講することとなっています。不適切な養育環境等で培われて来た不適切な思考パターンや行動パターンを、まずは認識し、社会に適用できるようなパターンに段階的に変容させていく「認知行動療法」が中心となっています。

 しかしながら、令和2年の「性犯罪者処遇プログラム検討会報告書」に「プログラムを受けた者と受けなかった者の再犯率を比較したところ、電車での痴漢のように行為が常習化している者や、子どもを狙うような者は、再犯率が変わらず、明確な効果が見られなかった」との記述がります。

 私は、2年前の令和3年2月定例県議会で、「性犯罪を減少させるために、心療内科、精神科等との連携の強化」を県に提言しました。

 今年3月、法務省が地方公共団体に向けて性犯罪の再犯防止に取り組むために作成した、「性犯罪の再犯防止に向けた地域ガイドライン」にも精神保健福祉センター等、医療機関との連携を強化すべき旨が記述されています。

 私は、それと同時に、社会全体で性犯罪の教育と予防プログラムを実施し、性犯罪を防ぐための知識と意識を高める必要もあると考えています。