戦後の努力と進歩に学ぶ

 船橋市の西部にある行田公園には、1941年に戦中の真珠湾攻撃を告げる暗号「ニイタカヤマノボレ1208(12月8日に米国ハワイ真珠湾の米軍艦艇、施設、基地を攻撃せよ)」が発信された海軍無線電信所船橋送信所の無線塔の記念碑があります。長期化していく戦争中には、不足する生活物資を確保するために、米穀をはじめとする主要食糧や多くの生活必需品の配給制が実施されました。やがて食糧や生活必需品は配給を通じてしか入手できなくなり、物資不足は終戦後もしばらくの間続きました。1945年に第二次世界大戦が終結し、日本は驚異的な復興をとげました。今年も8月15日に「終戦の日」を迎え、終戦から79年が経ちます。

 戦後の荒廃から立ち上がり、経済成長とともに医療技術も進歩して、私たち一人一人の生活の質が向上した結果、私たちはより健康で長い人生を送ることができるようになりました。厚生労働省が発表した去年の日本人の平均寿命によりますと、女性が87・14歳、男性が81・09歳でした。いずれも前の年を半月ほど上回っています。国別の順位で見ると、女性は39年連続で世界1位となり、男性は5位です。

 高齢者がより活躍できるような働き方や労働環境の整備を進めるとともに、高齢者が孤立せず、健康で自立した生活を送るために、支え合う環境を作ることが重要です。

 それと同時に、少子高齢化が進み、少ない生産年齢人口で多くの高齢者を支えなければいけない時代を迎え、若年層ほど、将来に夢を描けず消費にも消極的と言われています。将来を担う若者にも目を向けなければなりません。現在、日本全体では約40%が非正規雇用で働いています。90年代のバブルの崩壊から経済が停滞して景気後退に逆戻りし、所得格差が広がる一方です。

 そして、物価高騰の影響で貧困が広がり、食料支援のニーズはいっそう高まっているのに対し、全国のフードバンクが受け取る食料寄付が大きく減少しているとの調査結果が発表されました。前年同月比で、今年4月11%減、5月は17%減、6月に至っては38%減という結果です。さらに帝国データバンクの調査によると、8月から値上げされる食品は642品目で、この先9月・10月にかけては、値上げの品目がさらに増え、秋は「値上げラッシュ」になる見通しだということです。

 岸田総理は、「酷暑乗り切り緊急支援」と称して、8~10月の3か月分の電気・ガス料金への補助金を支給することを発表しましたが、「焼け石に水」ではないでしょうか。

 一時的な政策ではなく、生活の安定を確保する賃金の実質的な引き上げや、最低賃金の適正化を図ることで精神的にも経済的にも安定し、幸福な生活を送るための基盤を築けるようにすることが重要です。

 誰も経験したことのない激動の時代を生き抜いてきた人たちが築き上げた日本です。戦後の努力と進歩に敬意を払いながら、戦後79年という長い年月の中で、私たちは歴史から学び、より良い未来に向けて歩まなければなりません。