現在、学校に本来配置するはずの教員を確保できずに未配置となっている状態、いわゆる教員不足が起き、子どもたちの学びに深刻な影響が出ています。
第2次世界大戦後、労働基準法が1947年に公布・施行され、週の労働時間は40時間、1日の労働時間は8時間までと決められました。しかし、公務員は部署や職務によって拘束時間が大きく異なることが、問題として指摘されるようになり、1948年に公務員の給与制度改革がなされ、週における拘束時間に応じて給与が支給されることになりました。
一方で、教育職員は勤務時間を単純に測定することが難しく、残業手当が支払われないようなことが度々起こり、裁判になることもありました。そうした状況を踏まえ、教育職員に関しては、残業手当は支給しないこととし、代わりに「週48時間以上勤務する」ことを想定して、基本給(月給)の4%に相当する教職調整額を支給することにしました。つまり残業手当は支払わないけど、一定額の賃金を上乗せすることで教育職員の職務の特殊性に対応しようとし、1971年に「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」が制定され、2004年に現在の名称である「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」に改められました。
東洋経済新報社が、昨年12月に行ったアンケート調査(小・中学校、高等学校の教員600人を対象)によると、教員不足、教員のなり手不足の原因(いずれも複数回答)は、「長時間労働の常態化」とする回答が7割前後と最多で、次いで「新しい教育や保護者対応など業務の肥大化」「休暇が取りづらい」など過酷な労働環境に関わる回答が上位を占め、「給与面の処遇」という回答も多かったそうです。
このような、過酷な労働環境で働き続けると、燃え尽き症候群(情熱の喪失・達成感の減少・感情の冷淡化)となり、個人生活にも影響を与え、身体的・精神的な健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
そして仕事に全てのエネルギーを注いでしまった場合、定年退職を迎えたあとには社会的な繋がりが不足し、孤独感や自己価値観の喪失などの心理的な健康に影響を及ぼして、孤立などの社交的な問題を引き起こす可能性があります。
国は昨年7月、10年ごとの教員免許更新制度を廃止し、有効期限切れの『ペーパーティーチャー』でも非常勤講師や臨時講師として採用できるように法改正が施行されました。教員不足が深刻な全国の自治体が活用を探っているようですが、はたして教員のなり手不足の解消につながるでしょうか。
教員としての仕事に充実と喜びを感じ、プライベートでも新たな目標や趣味を見つけ、社会的なつながりを維持しながら幸せな人生を送るためには、働き方の見直しや働きやすい環境の整備を進め、教員のキャリアをこれからの時代にふさわしい魅力的なものにしていくことが重要です。将来を担う子供たちのためにも、教員の資質能力がより一層高いものとなるように、今後も県に提言してまいります。