国は、来年度(2025年)から、3人以上の子どもがいる多子世帯の大学授業料などを無償化する方針だとのことです。
しかしながらこの制度は、第1子が社会人となり扶養から外れると、第2子と第3子は支援対象外になります。また、「大学に行かない人は恩恵を受けられない」「子どもが3人以上いない家庭は、自分の子どもには、奨学金を借りて大学を卒業させなければならない」等、この制度の不備や矛盾についての不満が噴出しています。
高校については、平成22年(2010年)から、所得制限はあるものの、家庭の教育費負担軽減を図るため「高等学校等就学支援金制度」が設けられ、教育費の実質無償化が図られています。また、東京都が本年度(2024年)より、この所得制限を撤廃することから、これは全国的に波及していくものと思われます。
これらの高等教育の無償化の取り組みによって、日本の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合は大きく変わると思われますが、令和4年(2022年)10月、経済協力開発機構(OECD)が公表した令和元年(2019年)のOECD加盟カ37国における、国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合を見ますと、その割合が最も高かったのがノルウェーの6・4%、最も低かったのがアイルランドの2・7%、OECD平均は4・1%でした。
そして、日本は2・8%でアイルランドより、わずか0・1%多かったものの、データのある加盟37カ国の中では、下から2番目の36位という結果でした。
また、大学などの高等教育を受ける学生の私費負担の割合も、日本は67%と、OECD平均の31%を大きく上回っていました。
別のデータによりますと、OECD加盟の34カ国中、32カ国で返済義務のない給付型奨学金を実施しており、北欧諸国やフランス、ドイツなどの17カ国では、大学の授業料を無償化しています。そして、OECD加盟国の中で大学授業料が有料、かつ公的な給付型奨学金がないのは日本だけです。
エネルギー資源や鉱物資源の乏しい日本が、世界と渡り合って、豊かな社会を維持していくには、日本人それぞれの資質を磨き上げるしかありません。そのことからも、「教育」は日本の行く末を左右する重要なものだと言えます。
また、次世代は、いずれ社会の第一線から退く現役世代を支えることになりますから、現役世代が豊かな老後を送れるかどうかは、次世代の「力」にかかってきます。
「教育は未来への投資」と言いますが、子育てが終わった方、子どもをお持ちでない方の未来にも関係することですので、私は、教育への国民負担のあり方についても「国家100年の大計」として、真剣に議論する必要があると考えています。