3月2日、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて開催された国連総会において、「ロシアに対して軍事行動の即時停止を求める決議案」が、我が国を含めた141カ国の圧倒的賛成多数により採択されました。これに反対したのはロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリアの5カ国のみで、棄権したのは中国、インド、ベトナム、キューバ、イラン等、ロシア製武器輸入国を中心とする35カ国でした。この採決で注目すべきことは、反対もしくは棄権した国の政治形態です。
世界の国々を次の4つの政治形態に分類すると、以下のようになります。
閉鎖型独裁・・・・・国民に複数政党による選挙を通して、政府の最高責任者や立法府を選ぶ権利がない国(中国、北朝鮮、ミャンマー等)
選挙による独裁・・・国民は複数政党による選挙を通して、政府の最高責任者や立法府を選ぶ権利はあるものの、自由・公正等の国民の権利が制限されて いる国(ロシア、ベラルーシ、インド、トルコ等)
選挙による民主主義・・・自由・公正で複数政党による選挙に参加する権利が保障されている国(ブラジル、インドネシア、モンゴル、南アフリカ等)
自由民主主義・・・・・・選挙による民主主義に加え、個人やマイノリティーの権利が保障され、国民は法の下に平等であり、行政、立法、司法の三権分立が確立した国(日本、韓国、欧米諸国等)
選挙による民主主義、自由民主主義の国は約90カ国、人口にして約23億人、閉鎖型独裁、選挙による独裁の国は約109カ国、人口にして約55.6億人、つまり世界の人口の約71%が独裁国家に住んでいることになります。
そして「ロシアに対して軍事行動の即時停止を求める決議案」に反対もしくは棄権したのは、そのほとんどが独裁国家です。また、それらの国は国家間の課題を解決しようとする際、最終的に武力を用いることも辞さないという傾向があり、国家予算に占める軍事費の割合も高いという傾向も持っています。
ロシアの侵略の理由は、ロシア系住民の多く住む地域を自国の勢力圏内に編入(併合)することや、ウクライナにEU不参加と非武装化を強要することですが、これらは、そもそもウクライナ国民が自ら決めるべきもので、国連憲章第1条の2「人民の同権及び自決の原則の尊重」に反します。
この侵略について、ウクライナのゼレンスキー大統領は「今、戦争はウクライナで起きているが、これは民主主義や自由という価値観のための戦争だ」と世界に訴えています。そして、これまで軍事同盟を結ばず、中立政策のもと、紛争当事国に武器を供与しないことを国是としてきたスウェーデンやフィンランドも、その国是を破り、ウクライナに兵器を供与することを決定し、また永世中立国のスイスもEU(欧州連合)の対ロシア制裁に同調し、プーチン氏の資産凍結等を決定しています。世界は今、中立政策をとっていた民主国家も、その対応を変えています。独裁国家に隣接する我が国も、民主国家の一員として、ウクライナへの連帯を、より積極的に示す必要があるのではないでしょうか。