災害の教訓を防災に活かす

 私の亡父は北陸の富山県出身ですので、これまでに私も冬の北陸に何度も足を運んでいます。北陸にお住まいの方たちから、北陸の本当の冬の寒さはこんなもんじゃないよと笑われてしまうかもしれませんが、私もこれまでの経験から、北陸の厳しい寒さを知っているつもりです。

 ご承知の通り、この北陸の冬の真っ只中に能登半島地震は起こりました。被災者が避難したのは、市町から指定されている地域の小・中学校の体育館ですが、避難所の暖房器具は当初、ストーブだけで体育館の床からの底冷えのため、被災者は夜も満足に寝ることができず、「低体温症」となり、健康を害す可能性がありました。

 令和2年の国勢調査によりますと、地震で大きな被害を受けた珠洲市など石川県の7市町では、65歳以上の人の割合が5割を超えている地区が49%にも上っており、被災者の多くは高齢者です。過去の災害でもそうですが、「災害関連死」でお亡くなりになる高齢者が多いことから、避難所における「寒さ対策」は喫緊の課題となりました。

 また地震の発災直後に、千葉県は救助隊・支援隊を派遣するなど、迅速な対応をしましたが、派遣された方々も当初、被災者の方々と一緒に避難所で寝泊まりすることとなり、やはり床からの底冷えのため、夜も満足に寝ることができず、それがために疲労が蓄積し、体調を崩した方もいたという話を聞いています。

 私は、能登半島地震を教訓に、体育館など大きな空間を温めるのにストーブの利用が適切かどうか。発電機や充電池等を利用して暖房器具を稼働できないか。床からの底冷えを防ぐために段ボールベッドの備蓄数を増やすべきではないか。毛布や使い捨てカイロの備蓄数も増やすべきではないか等、避難所における「寒さ対策」の見直しを、千葉県に提言する所存です。

 自衛隊は災害派遣された際、避難所を利用することなく、用意された敷地にテントを張って、トイレも自ら用意して任務を遂行します。水はもちろんのこと、炊事車両で避難者に温かい食事を提供し、お風呂の提供もできます。自衛隊が災害派遣の際に大活躍できる理由に、衣食住、燃料、車両等の全てを他の組織に頼ることなく、自前で準備できる「自己完結能力」を持つ組織であることが挙げられます。

 しかし、自衛隊の本来の任務は「国防」です。北朝鮮は2024年に入ってから弾道ミサイルや巡航ミサイルの発射を繰り返し、2月14日までに6回目になります。軍事侵攻やテロに対処する軍事作戦は自衛隊にしかできません。国民保護法では、自衛隊は「支障がない範囲で住民の避難救援支援や災害救助をする」とありますが、「自衛隊は要請すれば来てくれる」というわけではなく、有事には自衛隊が「国民の要請に応えられない場合がある」という認識を持たなければならないと思います。

 私は、千葉県の救助隊・支援隊も自衛隊のようにテント、折り畳みの簡易ベッド、寒冷地対応の寝袋、炊事車両、トイレ専用車両等を装備して、自治会や町内会などの地域の組織とともに、持てる力を存分に発揮できる体制をつくるべきだと考えます。