千葉県の南房総地域は、石川県の能登地域と同様に国の定める「半島振興法」の対象地域であり、雨の抜けない粘土が多く含まれているため、土砂災害の発生しやすい地域で、災害時に孤立集落の発生が危惧されています。
また、昨年の4月1日現在、千葉県の高齢化率は27・5%でした。市町村別では、1位御宿町52・0%、2位鋸南町49・6%、3位南房総市47・1%でした。これらの上位に名を連ねている地域は、地震による津波、大雨による土砂災害などで、甚大な被害が出るおそれがあり、孤立集落が発生する可能性の高い市町村ばかりです。
平成30年7月豪雨、令和元年東日本台風(台風19号)では、東日本を中心に20都県にわたって950件を超える土砂災害が発生しました。ライフラインにも大きな被害が生じ、また、道路の損壊や道路への土砂の流入、橋梁の流出などにより多数の地域が孤立しました。そして、死者数の約7割近くが高齢者でした。
千葉県の身体障害者手帳の所有者数は、昨年の3月31日現在、177,883人です。このうちの126,248人が65歳以上で、所有者全体の7割以上を占めています。ちなみに、東日本大震災では死者数のうち、60代以上の割合が全体の約65%を占め、そのうち障がい者の死者、行方不明者の割合は健常者の約2倍でした。
そして、国は東日本大震災の苦い経験から平成25年(2013年)、災害時に自ら避難することが困難な障がい者、高齢者、外国人、妊産婦等、避難するのに誰かしらの支援を必要とする方々の名簿、「避難行動要支援者名簿」を市町村に作成することを義務付けました。
令和3年(2021年)には、災害時における避難行動要支援者への避難支援等を実効性のあるものとすべく、避難行動要支援者、それぞれ個別の避難計画の作成を市町村の努力義務としました。(避難行動要支援者名簿に基づく個別避難計画)
しかしながら、現在、千葉県内54市町村のうち、この避難行動要支援者名簿に基づく個別避難計画を策定したのは41市町村に留まっており、いまだ13市町村のおいては、未作成のままです。その理由としては、作成に関するマンパワーが不足していたり、具体的な作成のノウハウが十分でないことなどが挙げられます。
聴覚障がい者は、防災無線など緊急避難を促すアナウンスは聞こえません。また、視覚障がい者や車いす使用者は迅速に行動することは容易ではありません。乳幼児や妊産婦も同様です。個別計画が未作成の状態とは、視覚障がい者や車いす使用者、乳幼児や妊産婦に、瓦礫(がれき)が散乱し、健常者ですら歩行困難な道路を自力で通り、何とか避難して欲しいと言っているのと同じです。
私はこれまで、県内市町村の個別避難計画作成への強力な支援を、県に機会あるごとに訴えてきました。そしてこれからも、誰も取り残さないために災害弱者の命を救う取り組みに力を入れて参ります。