今月の中旬、都内の八百屋ではキャベツが1玉税込1000円を超えたという驚きのニュースが流れました。
帝国データバンクの今年4月の調査によりますと、国内の主な食品メーカー195社で値上げされた食品は、価格を変えずに内容量を減らす「実質値上げ」を含めて2,806品目でした。この値上げの理由としては、円安による輸入コストの増加や世界的な天候不順による原材料価格の上昇などが挙げられています。そして、今年の夏以降にも値上げラッシュがあるとされています。
さらに物価高対策として続けていた家庭や企業の電気代やガス代の負担を軽減するための補助金が5月で終了することが影響し、電気料金が、大手電力会社10社、ガス料金が大手ガス会社4社すべてで6月使用分から値上げとなります。
しかしながら、生活の質を維持していく、あるいは暮らしの底上げをするためには、物価上昇分に見合った賃上げが必要となります。その賃金は原材料や燃料費等のコスト上昇分と同様にモノの価格に反映(価格転嫁)せざるを得ません。モノの価格が上がることは、消費者としては極めて痛い話ですが、労務費等の価格転嫁は、労働者への正当な報酬につながり、暮らしの底上げにもつながるものです。
報道によりますと、大手企業(従業員500人以上の89社)を対象とした、今年の春闘の妥結状況の結果を見ますと、定期昇給にベースアップを加えた月額賃金の引き上げ率は、5・58%で、30年ぶりの高水準となった昨年より1・67ポイントの上昇とのことでした。また、中小企業(従業員300人未満の2,480社)の平均の賃上げ率は4・66%でした。しかし、厚労省が今月9日に公表した、従業員5人以上の3万社余りを対象に調査した今年3月の実質賃金は、前年同月比2・5%減で、過去最長の24ヶ月連続減という状況にあり、中小企業は物価の上昇に賃金の伸びが追いついていない状況が続いています。
そもそも大企業と中小企業とでは、給与ベースに大きな開きがありますが、賃上げ率でも1%近くの差があることが、春闘の結果で示されました。この大企業と中小企業との賃上げ率の差について、連合は今月16日の「中間まとめ案」の中で、「中小企業では人件費などの価格転嫁が進んでいない」ことを原因のひとつとして挙げています。そして今後、持続的な賃上げと格差是正を実現できる環境をつくるため、経営側などへの(価格転嫁を含めた)働きかけを強めていく考えを示しています。
所得格差が広がると、社会全体の不平等感が増大します。貧困層は出生時の地位や家庭の経済状況がその後の人生に大きな影響を与える可能性が高まります。
私は暮らしを底上げするためには中小企業等を中心とした、真っ当な価格転嫁は致し方ないことだと考えています。誰一人取り残さない社会を実現するため、これからもしっかりと提言してまいります。