発達障害に係る調査について

 12月13日、文部科学省の※「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査(令和4年)」で、通常学級に通う公立小中学校の児童生徒の8.8%が、学習や行動に困難のある発達障害の可能性があるという調査結果が明らかになりました。これは、35人学級なら1クラスに約3人が発達障害の可能性があるということです。

 過去の調査では、20年前は発達障害の可能性がある児童生徒の割合は6.3%、10年前は、6.5%で、増え続けています。これに対し文科省は「発達障害の児童生徒が増加したのではなく、保護者や教員の理解が深まり『該当する』との判断が増えた」と分析しています。

 また、今年の調査で発達障害のある児童生徒への支援状況は、校長や教員らが支援体制を検討する「校内委員会」によって、「特別な支援が必要と判断」されている割合は28・7%(2012年は18.4%)でした。また、通常学級に在籍しつつ、別室などで一部だけ特別な授業を受ける「通級指導」を受けているのは10.6%(同3.9%)、個別の支援計画を作成しているのは18.1%(同7.9%)など前回より割合は上昇しています。そして文科省は、この調査結果を受けて「児童生徒への個別対応や通級指導の拡充を促していきたい」としています。

 しかしながら、この児童生徒への個別対応や通級指導の拡充をするためには、大きな壁を乗り越えなければなりません。全国の教育現場では、過酷な労働環境が敬遠され教員の「なり手不足」を招き、教員不足になっています。要するに教育現場では、児童生徒一人ひとりに向き合う余裕も人材もなく、特別支援を必要とする児童生徒の増加に対して、学校の体制が追い付いていないのが実情です。しかし、発達障害を持つ児童生徒たちに対しては専門知識に基づくていねいな支援方法が必要ですし、単に教員を充てればいい・増やせばいいというわけではありません。

 発達障害の子どもたちは、学習方法に限らずコミュニケーションの面でも得手・不得手の落差が大きく、それが「生きづらさ」につながっている場合が多くあります。発達障害と呼ばれる児童生徒の割合が、これだけあるということは、おそらく社会に出て働いている大人の中でも、高い割合で多くの人たちが「生きづらさ」を感じながら、懸命に生きていることでしょう。

 人は誰しも、生きていくなかで「幸せになりたい」「幸福でいたい」と願うものではないでしょうか。ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(受容)は、それぞれの個を尊重し、認め合い、良いところを活かすことです。「多様な人々が成長し、活躍する社会」、共生社会の実現と、人々の幸福になるための努力を後押しすることが政治の役割です。

※「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」・・・全国の公立小中高校の通常学級に在籍する子ども約8万8500人を抽出し、学級担任らが子どもの発達障害を診断するチェックシートに回答(回収率84.6%)