今から41年前の1980年5月24日、日本オリンピック委員会(JOC)は、前年1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議する米国の呼びかけに応じた日本政府の意向により、モスクワ五輪への不参加を決定しました。
五輪に参加か不参加かについて、選手の意見を求めるJOC臨時総会が1980年4月23日に開かれ、柔道のオリンピック代表選手であった山下泰裕さんが「柔道を始めるとき大きな夢を持ちました。一生懸命がんばって、将来オリンピックに出るんだと……」と涙ながらに参加したいという熱い思いを訴えました。
当時、私は学生でしたが、その山下選手の涙の訴えを大学のキャンパスのテレビで観ており、それは今でも鮮明におぼえています。そして今、山下泰裕さんは新型コロナウイルスの猛威の下、東京オリンピック・パラリンピックを開催すべきではないという意見が多くある中、JOCの会長という辛いお立場におられます。
千葉県では、政府の東京オリンピック・パラリンピックの開催方針を受けて、事前合宿地となる県内自治体に対して、受け入れマニュアルを作成し、外国人選手の健康管理や毎日のPCR検査等の感染防止対策や、感染した場合の対応方針などを定めるように求めています。しかしながら、4月30日に一宮町は、ブラジルの代表チームから大会期間中、一宮町内に拠点を置きたいので、感染対策に必要な選手の検査協力等を打診されましたが、一宮町では対応できる医療機関がないこと等を理由に断っていたことが報道されました。
菅総理は緊急事態宣言の延長発表の記者会見で、「心配の声が国民の皆様から上がっていることは承知している。選手らの滞在先や移動手段の制限、毎日の検査などの厳格な対策を徹底することで国民の命や健康を守り、安全安心の大会を実現することは可能」と述べました。
しかし、5月7日、中米・ベリーズのカヌー・スプリント及び陸上チームの事前合宿を受け入れる予定だった横芝光町は「町の医療提供体制を踏まえると選手の安全を確保できない」と事前合宿の受け入れ中止を決定し、ロシア側からは、フェンシング選手受け入れる予定だった長柄町に対し「自国での練習に力を入れたい」と中止の申し出があったという報道がありました。
そして5月13日には、米国の陸上競技連盟から「世界的流行が続き、選手の安全面に関して懸念が生じている」等の理由により、成田市、佐倉市、印西市で受け入れる予定だった米国の陸上チームの事前合宿を中止する旨の連絡があり、英国の競技団体からも「英国のパラリンピック委員会から(事前合宿をせずに)直接、選手村に入るよう指針が示された」等の理由により、浦安市で予定されていた英国の車いすバスケットボールチームの事前合宿を中止する旨の連絡があり、県内4カ国目となりました。
菅総理は医療・検査体制を充実させ、感染拡大を防ぎ、安心安全の大会を実現できるのでしょうか。またもや選手の涙を見ることになるのでしょうか。
令和3年5月16日 野田たけひこ