厚生労働省の資料によりますと、令和2年現在、我が国の精神疾患を有する総患者数は約419・3万人で、いわゆる4大疾患(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)よりも多い状況にあり、患者総数も近年増加傾向にあるとのことです。
そして精神疾患は、糖尿病や高血圧と同じで、誰でもかかる可能性があり、我が国では、2人に1人は過去1ヶ月間にストレスを感じており、生涯を通じて5人に1人が精神疾患にかかるといわれています。
しかしながら、精神科医療を受診した経験のある人の割合が、欧米が52%であるのに対し、我が国は6%という低い割合であることからも、まずは精神疾患や精神障害者に対する国民の理解を深め、地域における相談支援体制の強化や、精神科医療の充実が必要です。
さて精神疾患の現状についてですが、令和2年度、我が国の公立小中高校と特別支援学校で精神疾患を理由に休職した教員は前年度より694人多い5897人で過去最多となり、千葉県は217人でした。千葉県内の児童相談所の児童福祉司、心理職の10・3%が、精神疾患による1カ月以上の長期療養を取得し、その取得率は、県職員の平均2・7%を大幅に上回り、市川児童相談所の職員の長期療養の取得率に至っては、県職員の平均の6倍以上の16・7%で、県内の児童相談所の中で最も高い取得率でした。
精神科医療に係る様々な取組についてですが、厚生労働省の中央教育審議会(中教審)の特別部会が今年8月に取りまとめた「教員の働き方をめぐる緊急提言」には「教員の精神疾患予防や早期発見、復職に向けた支援やフォローアップといったメンタルヘルス対策を講じる」という方針が示されています。
また法務省の「性犯罪の再犯防止に向けた地域ガイドライン」では、「精神保健福祉センター等、医療機関との連携を強化すべき」だとしています。
都道府県においても、令和2年、福岡県が「福岡県性暴力加害者相談窓口」を開設し、専門スタッフが対象者一人ひとりの相談内容に応じて、再犯防止専門プログラムを実施したり、就労等の生活自立支援や、問題行動を是正するための精神科等の専門医療機関の紹介を行っています。今年、大阪府も「性犯罪者に対する心理カウンセリング支援制度」を立ち上げました
精神科医療を充実させるためには、身体的健康と精神的健康の間の境界をなくし、精神的な問題に対する社会的な差別や偏見を減少させるための教育や認知を向上させる必要があります。また、精神疾患に対しての予防と、患者が早期に支援を受けることができるように様々な分野において、メンタルヘルスを定期的にチェックする精神科医療のアプローチが必要です。