視覚障がい者への補装具費支給制度について

 我が国の視覚障がい者の総数は、平成28年の厚生労働省の調べによりますと約31万2千人です(令和4年にも調査がありましたが、結果はまだ公表されていません)

 また、生まれながら視覚障がいを持っている方ではなく、新たに視覚障がいとの認定を受けた18歳以上の方を対象にした、視覚障がいの原因となった疾患の調査によりますと、第1位は緑内障、第2位は網膜色素変性、第3位は糖尿病網膜症です。

 これらの視覚障がいの原因となった疾患は、いずれも加齢によって発症する可能性が高くなる疾患ですから、我が国の平均寿命の延伸や、高齢化率の上昇を考えますと、今後、新たに視覚障がいとなる方の数は増える可能性があります。

 さて、目が見える方は地図を見ながら、「ラーメン屋さんの角を右に曲がり、大きな看板のゲームセンターを左に曲がり、細い砂利道を越えた先」などと、見える情報で道を覚えていると思います。しかし視覚障がい者の方の場合は、「ラーメンの香りがしてきたら右に曲がる。ゲーム機の大きな音が聞こえてきたら左に曲がり、足元がデコボコの幅の狭い道を歩いた先」と、匂い・音・足の感覚などを頼りに道を覚えているそうです。

 視覚障がい者が持つ「白杖」(白いつえ・視覚障害者安全つえ)には大きく3つの役割があり、①歩行面(路面)の情報収集 ②障害物からの防御 ③存在を周囲に知らせる という機能があります。先端には石突(一般的にはチップと呼称)を付けますが、地面をたたいた時の音の反響を聞いて今どれくらいの広さの場所にいるのか、入り口はどのあたりにあるのかが確認できるそうです。白杖は、視覚障がい者が生活していく上で欠くことのできないものです。

 この白杖の購入の際には、原則購入者に1割負担してもらうものの、国の「補装具費支給制度」により、残りの購入費の2分の1を国、4分の1を都道府県、残りの4分の1を市町村が負担することとなっています。給付基準額は1番高いものでも、携帯用の繊維複合素材の杖が4千4百円に上限設定されており、耐用年数も2年と定められています。

 しかしながら、この給付基準額や耐用年数、また仕様等は長期にわたって見直しされていません。諸物価高騰の折でもあり、白杖のメーカーからは、「当事者のニーズ及び時代に即した新しい製品を開発したいのに新しく補装具として 指定されることが難しい」「給付基準額が何十年も見直しがされず、製造や輸入が難しい」、また販売店からも「当事者のニーズに応えたくても採算が合わない 」等の声が挙がっています。

 障がい者へのダイバーシティ推進のためには、給付基準額等の見直し等を行い、個人が持つ特性や能力を最大限発揮できる環境や体制を整えることが大切だと思います。今後も誰もが活躍できる社会を目指すため、尽力していく所存です。