「働かざるもの食うべからず」これは、レーニンがロシア革命の際に発した言葉です。ここでいう「働かざるもの」とは本来、貴族、大地主、資本家等、当時のロシアの特権階級を指したもので、階級間の対立を煽る政治的スローガンでした。この言葉、今では怠惰を戒める意味合いで使われることが多いようですが、しかし、それが種々の事情により「働けないもの」をも対象に「食うべからず」として使われることもあります。
昨年の小田原市生活保護ジャンパー事件をご記憶でしょうか。平成19年に生活保護を打ち切られた男性がカッターナイフで市職員を切りつけたことをきっかけに、それ以降の10年間、生活保護担当の市職員は自腹で生活(S)、保護(H)、悪(A)撲滅チーム(T)の頭文字を取り「SHAT TEAM HOGO」や「If they try to deceive us for gaining a profit by injustice, WE DARE TO SAY ,THEY ARE DREGS!」日本語訳(もし不正受給を得るために我々を騙そうとする者がいるのなら、敢えて言おう、奴らはカスだ!)と書かれたジャンパーを着て、生活保護世帯への訪問等をしていました。それが発覚し、市長が生活保護受給者を傷つけたと謝罪しました。そして当時、小田原市に約2千件近くの意見が寄せられました。そのうちの約55%が不正受給を行っていない生活保護受給者への配慮を欠く行為と非難するものでしたが、残りの約45%は市職員の姿勢や行為を擁護するものでした。
まじめに働いている、懸命に生きているからこそ、生活保護の不正受給に怒りを覚えるというのは、誰もが理解することですが、生活保護対象者の約90%が受給するフランス等と比べ、約15〜16%の人たちにしか受給していない日本で、弱者を萎縮させるようなことはいかがなものでしょうか。
前回お配りした「県政改革 誰のための政治が必要なのか」でOECD加盟国41カ国を対象とした「働くこと」に係る意識調査で、「私の仕事はおもしろい」39位、「ストレスを感じる」3位等の調査結果をお示ししましたが、日本人の多くの方が働くことに苦痛を感じています。苦痛に満ちた仕事を強いられ続けたならば、他者(弱者)への優しさを示す余裕がなくなるのも理解できます。
私は、まじめに働き懸命に生きている人たちが、気持ちに余裕を持てる社会をつくること、国民の大多数であるこの人たちのための政治が必要だと考えています。それが喫緊の課題です。
平成30年6月3日 野田たけひこ